<夢の浮世> 1時間目 「憂世は浮世」


 さあて、今日の授業の題は・・(フリップを貼る)。「憂世は浮世」「何それ?」 うん。あとで授業の中で説明するよ。ところで今日やりたいことは・・

(黒板に何枚かの浮世絵の写真を貼る)。このような絵をなんて言うか知っている人?

「はい、はい、浮世絵!」「すごいよく知っているね」「ノートに書いてあるじゃないか」「なーんだ」「でなんで浮世絵っていうの?」

うん。いい質問だ。『うきよ』っていう言葉は今、自分が生きているこの世」を指す言葉で、この『うきよ』を描いた絵なので『浮世絵』っていうんだよ。最

初のころはこういう美人画なんだ。小町娘って言って、町内の美人コンテストで1位になった人なんかが描かれた。「へえー美人コンテストなんかやっ

てたんだ!」 そう。でもそれだけじゃつまらないというので、その美人が何かしているところを描いたのが次の絵(喜多川歌麿の絵を示す)。この美

人何をしている? 「なんか吹いているね」「お釜があるよ!」「あっつ、ご飯炊いているんだ!!」 そう。当たり!!。こっちはお化粧をしているとこ

ろ。つぎは・・・(東洲斎写楽の絵を示す) 「あっつ、歌舞伎役者だ!!」 そう。有名な歌舞伎役者の当たり芝居の名場面を書いている。そして最後

には風景画も出てくる。これは葛飾北斎という人が様々な角度から富士山を描いた『富岳三十六景』という作品のひとつ。こっちは歌川広重というひ

との『東海道五十三次』という作品の一つだ。こんなふううにいろいろあるけど、江戸時代の人々の暮らしを描いた絵なんだ。浮世絵というのは。

板書事項

○浮世絵とは?:江戸時代の絵で、今の世(浮世)を題材に描いたので「浮世絵」
           と呼ばれる。版画にして大量に印刷され安く庶民にも売られた。

 今日は、各班に浮世絵を6枚配るので、その絵をじっくり見て、その絵から江戸時代の人々がどんな暮らしをしていたかを読みとってみよう。1番は

『東都名所芝居町繁栄の図』芝居小屋の風景を描いている。2番は『江戸名所百景高輪うしまち』今の品川の海のすぐ近くの町を描いている。3番は

『江戸名所百景日本橋通一丁目略図』だ。日本橋という江戸の中心的商店街を描いている。4番は『京都名所 淀川』だ。京都から大阪に行くには

船で淀川を下るんだがその風景を描いている。5番は『東海道五十三次  袋井』だ。東海道の宿場町の中で今の静岡県の袋井の宿場町の近くの

風景でを描いている。最後の6番は『木曽街道六十九次 垂井』だ。垂井という宿場町の風景を描いている。では15分ほど時間をあげるから、班の

みんなで協力して読みとってみよう。

 

 では一つずつ各班で読み取った結果を発表してもらおう。まず1番について。

 ここから江戸時代の人々がどんな暮らしをしていたか。どう読み取ったかな?。

「芝居小屋にたくさんの人が集まっている」「歌舞伎を見に来たんだ」「歌舞伎が流行していた」 そうだね。他には? 「なんか食べ物を運んでいる人

が居る」「えっつどれどれ?」「いたいた。これおそばじゃないかな。」「なんでこんなところにおそばの出前が来るの?」 うん。この頃の芝居は飲んだ

り食べたりしながら御芝居を見るんだよ。たぶん芝居小屋に出前なんだ。「へえー」「下駄はいている人と草履をはいている人とがいる」「それにぞう

りじゃなくてあの藁で編んだみたいなの・・・」「わらじ!」「そうそうわらじをはいている人もいるよ」「先生。それって何か意味あるの?」 いい質問だ。

この履物の中で一番値段が高いのがぞうり。次がけた。一番安いのがわらじなんだ。「へえー。知らなかった」

 では次は2番の絵に行こうか。

 これは何がわかる?。「船がたくさんある!」「きっと魚をとる船だと思う」「そうなの?先生?」 魚をとる船じゃあないんだ。「じゃ、貿易する船?」

「江戸で貿易したかよ?」 そう、貿易じゃないね。絵の手前にある車と同じ役割さ。「えっつ、車なんかあった?」「ある!。大きな車輪が書いてある」

そう。これって大八車っていうんだ。いまでいうと・・ 「タクシー」 ちがう。もっと大きいやつ。「バス!」 ではない。「じゃ、トラック」 そう。正解。

「じゃあ、さっきの船も荷物を運ぶんだ」 そう。大坂から江戸に味噌や醤油や米なんかを運んできた船なんだ。他には何かわかるかな?。

「犬がいる」「そばになんかゴミが落ちてるよ」「すいかだ!」「すいかなんかあったの?」 あった。江戸の人はスイカが好きなんだ。「赤いみがついた

まま捨ててあるから、スイカがいっぱいあったということだね」 なるほど。そうかもしれないね。

 じゃあ次の3番の絵に行ってみよう。

 ここは江戸一番の商店街の日本橋通1丁目だ。「白木屋があるよ」「あの飲み屋そんなに昔からあったのか?」 残念ながら飲み屋の白木屋では

ないよ。これは呉服屋。着物の布を売る店。これがのちに東急デパートになったんだ。「へえー。知らなかった」

「なんかみんな傘さしているよ」「日傘かな」 そうかもしれないね。「そばの出前もいる」「それに道で何か食ってるよ!」「何か売ってる店だ」「オレン

ジだ」「みかんだよ」「みかんなんかそのまま食うか?」 うん。なんだろうね。江戸時代はいろんな屋台の店があって、いろいろな食べ物が食べられ

たからね。「真中の大きな傘の人たちは何?」 うん。何か芝居と言うか芸みたいのを見せて歩いてるんじゃないかな。「楽器弾きながら歩いている

女の人もいる!」「三味線だ」 そう。その通り。三味線を伴奏に歌を歌ってお金をもらっているんだ。「なんとか庵って店があるね。蕎麦屋かな?」

そうかもしれないね。では次の4番に行ってみよう。

 これは大坂に行くために船に乗っているところ。「旅をしてるってわけだね」 そう。旅をしている。「船の中で何か食べている」「御酒みたいなのを飲

んでいるよ」「宴会やってんじゃないの」「手前の船は何してるんだ」 そう。何をしているんだろうね。「なんか売ってる!」「味噌汁かな?」「なんで?」

「御なべみたいのがあるもの」 そうかもしれないね。「要するに船で旅すると楽なわけだ」 そういうことだね。

 でh5番の絵に行ってみよう。

 これは東海道の宿場町袋井の近くの光景。何してる? 「休んでいる」「茶店だ!!」 そう茶店。御客が一人休んでいるね。「なんか乗り物みたい

なのがある!」「かごだ!!」 そう。かご屋も休んでいるね。そしてかご屋の一人と茶店のおばさんがかがんで何してる?。「御茶沸かしてる」 

そうだね。でも二人の口元を見ると・・・。「なんか棒みたいのがある」「火の中につっこんでいる」「あっつ、タバコだ」 そう。たばこを吸うのに火をつけ

ているんじゃないのかな。「あっつ。これキセル?」 そう。キセル。「キセルってなんだ?」 タバコを吸うとき、タバコの葉をもんでからその先の穴の

中につめてそれに火をつけて煙を吸うやつ。他には?

 「遠くに馬に何か積んで歩いてる人がいる」 そうだね。馬でも荷物を運んだんだ。では最後の6番の絵を見てみよう。

これは木曽街道の宿場町垂井。何がわかる?。「傘差している」「雨が降っているから、なんかわらみたいなのかぶってる」 そうだね。これは蓑。今

のレインコートみたいなもんだ。「左の店はおちゃを売っているのかな?」「御茶漬けだよ!」「あっつそうか」「じゃ、右の店は?」「御休みって書いて

あるから休憩所なんじゃないの?」 そうだね。そして、店先で何を売っている? 「あっ、浮世絵!!」 そう。浮世絵だね。「でもなんで雨の中で座っ

ているのかな?」 うん。良い質問だ。なんでだ?。「遠くからかごがくる!」「大名行列かな?」 そうかもしれないね。

 

 さて、6枚の浮世絵を見ながら江戸時代の人の暮らしを見てきたわけだが、浮世絵を見ての感想をノートに書いてごらん。

(5分ほどそれぞれが感想をノートに書いている)

 じゃあ何人かに発表してもらおう。○○君。「御芝居が流行ったり、旅をしながらいろんな物食べたり、なんかのんびりしている感じがしました。」 な

るほど。では□□さん。「浮世絵って面白いです。昔の人の暮らしが良くわかる」 そうだね。では△△さん。「とっても楽しそうです。なんかうきうきし

た感じがします」「浮世だ!!」「なんで?」「浮くって言う字じゃあないか!」「あっつ、そうか」 そうだね。

 ちょっと説明します。今の世をあらわす江戸時代の字は「浮世」です。これはどんな意味かと言うと。「ウキウキした感じ」 そうだ。でも前の戦国時

代にはこの字ではなく「憂世」だった。この「憂」という字はどんな意味?。「やさしい!!」 それは人偏がついたほうだ。優しいから人偏を取った字。

 わかるかな?。「わかんなーい!!」 そうか。これは暗いというか辛いと言うかとっても重苦しいいやな感じをさす字なんだ。

 そこで問題。今という時代をさす『うきよ』という言葉に戦国時代には「憂世」という暗い感じの字をあてたが、江戸時代には「浮世」というなんかウキ

ウキした字を当てるようになりました。どうしてこのように今をあらわす字がかわったのでしょうか。

「えっつ、わかんないよ。そんなの!!!!」 「戦国時代って戦争の多い時代ですよね」 そう。その通り。「だったら簡単だ」「えっつ、わかっちゃう

の」「わかんないよー!!!」(反応は様々である・・・・・しばらくして、)

 答えを書いた人も書けなかった人もいるみたいだね。でも今は書けなくても良い。これから何時間か江戸時代の庶民の暮らしを学んでみると、この

答えはできるようになるよ。今日はここまでにしておこう。

 


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