書名 | 人麿の運命 |
著者 | 古田武彦 |
出版社・出版年 | 原書房・1994年 |
内容・目次 | はじめに 第1章:近江のまぼろし 第2章:知られざる万葉集 1.中大兄の三山の歌 2.額田王と井戸王 3.仁徳と磐姫 第3章:人麿終焉の地「鴨山」をもとめて 1.斎藤茂吉の鴨山「湯抱」 2.梅原猛の鴨山「益田」 3.真実の鴨山への到達 第4章:「倭国万葉集」の実像 1.「古集」のしめすもの 2.「倭国」から「日本国」へ 第5章:「筑紫への挽歌」と人麿の光栄 1.消えゆく「遠の朝庭」 2.筑紫の「輝ける日」 第6章:人麿の立つ大地 1.「朝臣」の称号 2.「天孫降臨」を歌った人麿 第7章:人麿の運命 新万葉論―人麿補考― あとがき |
解説 | 万葉集にはいくつもの謎があった。雑歌(その他の歌)が主体となっていて他の歌がないこと。 瀬戸内地方と九州の人が詠んだ歌がないこと。「古集」という謎の歌集の存在など。 これらのことは現在の万葉集が古の万葉集の一部のみ伝えており、その他の歌を伝えると、 大和が日本の中心ではなく九州が日本の中心であった事実を示してしまうので、すべて削除 されたと考えると全て氷解することを著者は論証している。そしてこの観点から柿本人麿の歌 を詳細に眺めてみると、彼は九州王朝の臣下でありその宮廷歌人であったこと。そしてかれは 王権を簒奪した大和王朝にけっして媚を売ることなくその立場を貫いたことなどの事実が浮かび あがってくることを著者は論証する。 そしてさらに人麿終焉の地の鴨山の地を以上の視点にたって彼のそして彼の死後の関係者 の歌を分析する事から、新たにその地を確定して行く。 人麿論としてだけではなく、万葉論としてもすぐれた論考であり、他の万葉の歌人、例えば大伴 旅人や山上憶良などの人物像や歌論を考える上でもおおきな示唆を与えてくれる。 |
値段 | 1800円 |