書名 | 大化の改新―645年6月の宮廷革命― |
著者名 | 遠山美都男 |
出版社・出版年 | 中央公論社(新書)・1993年 |
内容・目次 | 序章:645年6月12日 T章:国家形成と王権継承 1.首長・王権・王権継承 2.卑弥呼・壱与―2代の「女王」 3.二つの大王家―倭の五王の王位継承 4.新たな人民支配システム―王権継承の新段階 5.稲目の登場―蘇我氏の成立 6.大兄と女帝と 7.世代内継承、その後 U章:王権と藤原氏の歴史 1.『家伝』の撰述―王権と藤原仲麻呂 2.「黒作懸佩刀』―王権と藤原不比等 3.安見児得たり―王権と藤原鎌足 V章:検証「乙巳の変」―人間関係 1.疾を称して退でて三嶋に居り―中臣連鎌足(鎌子) 2.ともに大事を謀るに足らず―軽皇子(孝徳天皇) 3.猶ほ古き冠を着る―阿倍内(倉梯)臣麻呂 4.進みて三韓の表文を読み唱ぐ―蘇我倉山田石川臣麻呂 5.賊党に説かしめ赴く所を知らしむ―巨勢臣徳太 6、金のゆきを帯びて壇の右に立つ―大伴連長徳(馬飼) 7、自ら長き槍を執りて殿の側に隠れたりー中大兄皇子(天智天皇) 8、群公子、ことごとく旻法師の堂に集まるー僧旻(新漢人日文) 9、大唐に卒せぬ―高向漢人(史)玄理 10、周孔の教えを南淵先生の所に学ぶ―南淵漢人請安 11、努力努力、急須に斬るべし―子麻呂・網田・勝麻呂 12、入鹿咲ひて剣を解く―俳優(ワザオギ) W章:検証「乙巳の変」―発生と展開 1、皇后臨朝、心に必ずしも安からず―事件の起点=山背大兄王の殺害 2、臣、罪を知らず―入鹿暗殺 3、吾が心痛し―古人大兄皇子 4、誰が爲に空しく戦い、尽く刑せられむや―蝦夷自決 5、位を中大兄に伝えむと欲す―事件の帰結=皇極譲位・孝徳即位 結章:「乙巳の変」のあとにくるもの―古代王権最大の分水嶺 1、「乙巳の変」の展開と結末 2、大化改新研究の流れ 3、「乙巳の変」と大化改新 あとがき |
解説 | この本は河内氏の「古代政治史における天皇制の論理」の研究成果を基礎にして日本書紀を丁寧に読み解く ことを通じて、「大化改新」といわれていた事件が王権内部における王位継承戦争であった事実を明らかにした もの。 事件に登場する人々の人間関係を丁寧に追うことを通じて事件の真相にせまる手法は、上質の推理小説を読 んでいるような迫力とさわやかな読後感を与える。 しかし問題はこの後にある。この事件が王位継承戦争であるなら、そのあとにあった「大化改新」と呼ばれる国 政上の改革は実在したのかという問題。著者は「王権は変わりつつあった」との論理で何の証拠もしめさずに「改 新はあった」と断定しているが、これは古代史学会の多数派に無原則的に与する論。 むしろ著者の一連の著作により明らかにされた「大和王権」内部では6・7世紀を通じて常に王位継承戦争が続 き、その最終決着が壬申の乱であるという事実を踏まえてみると、中国の史書における「倭王権」の叙述にはこの ような「王位継承戦争の続発」は現れていない事実と照らして、「乙巳の変」は大和王権内部の事件・「大化改新」 は「九州王朝=倭王権内部の事件」とし、大化改新の改革は九州王朝の歴史から資料を切りとって大和王権の 事件にすりかえたものという古田武彦の主張の方が一貫性を帯びてくる。 |
値段 | 840円 |