書名 | 古代政治史における天皇制の論理 |
著者名 | 河内祥輔 |
出版社・出版年 | 吉川弘文館・1986年 |
内容・目次 | 序論―予備的考察 1.「読史余論」をめぐって 2.「神皇正統記」をめぐって 3.皇位継承の概観 第1―6世紀型の皇統形成原理 1.皇位継承の理念 2.直系の創造と女帝 第2―8世紀型の皇統形成原理 1.文武から聖武へ 2.聖武期政治史の諸問題 3.直系原理の変質 第3―奈良時代後期政治史の基調 1.淳仁の即位と廃位 2.道鏡擁立運動の推進 3.光仁擁立の情況 4.皇位継承をめぐる二つの路線 第4―光仁系皇統の成立 1.光仁系皇統の課題 2.婚姻関係の諸相 3.弘仁元年の政変 4.直系の成立 第5―幼帝と摂政 1.幼帝の登場 2.惟喬擁立案の意味 3.摂政制の成立 第6―光孝擁立問題の視覚 1.陽成退位の事情 2.天皇光孝の性格 3.陽成退位式の特徴 4.光孝の擁立に至る経過 第7―宇多「院政」論 1・宇多即位の事情 2.醍醐即位をめぐる基本方針 3.時平・道真二頭体制の性格 4.「院政」の理念 5.「院政」の挫折 結び |
解説 | 従来は8世紀以降の古代政治史は藤原氏を主語として語られてきた。8世紀における藤原氏の陰謀 や9世紀以降の摂関政治などがそれである。著者は「古代政治史は天皇を主語として語られねばな らないとの仮説に立ち、天皇の第一の任務が皇統の継承にあることをつかみ、その皇統形成の原理 を探り出す。少なくとも6世紀以降は父も母もともに天皇の子であることが皇統を継ぐときの不可欠の 条件である。しかし問題はこの条件にあった候補者がいない時だ。つまり直系皇統断絶の事態。著者 は推古期のケースを分析することを通じて、これは候補者同士の殺戮戦か女帝という権威のもとでの 新たな直系皇統形成を託された候補者の修行と実績による貴族層全体の承認による平和的移行とい う二通りの方法で解決されている事実をつかみだす。長生きできずに皇位を継げなかったケースが廐戸 で長い修行期間を勝ちぬいたケースが中大兄である。そして殺戮戦となったのが645年の大化の改新や 672年の壬申の乱である。 古代政治史を皇統形成運動を中心に読むとその謎の多くは解明されることを著者は多くの実例を分析 して論証した。聖武天皇と仏教の関係・道鏡擁立、そして9世紀以降の「摂関政治」や「院政」も、この直系 皇統を維持または新たに形成しようとする運動として理解すると多くの謎は氷解する事を著者は示す。 |
値段 | 2700円 |