書名 | 白村江ー古代東アジア大戦の謎― |
著者名 | 遠山美都男 |
出版社名・出版年 | 講談社(現代新書)・1997年 |
内容・目次 | プロローグ:捕虜たちの生還 第1部:白村江への道 1.玄武門の変の落とし子―唐―高宗 2.大化から白雉へ―倭国―孝徳天皇 3.海東の曾子―百済―義慈王 4.姿顔美しくて―新羅―金春秋 5.興事を好む―再び倭国―斉明天皇 第2部:検証・白村江の戦い 6.君臣みな俘となる―百済滅亡の日 7.亡びたる国を興す―百済の遺臣たち 8.潮もかないぬ―斉明女帝、西へ 9.織冠を以って豊璋に授く―百済王冊封 10.飢えは後なり、亡びは先なりー周留城の亀裂 11.腐った狗のような・・・・―福信斬られ 12.海水みな赤し―倭船四百艘炎上す エピローグ:敗戦史観を見直す |
解説 | 663年。朝鮮百済の白村江で行われた倭国水軍20000人と唐水軍7000人 の戦いは、唐軍の圧勝に終わり、倭国水軍はほぼ壊滅した。これほどの壊滅的 打撃を受けながら倭国は亡びなかった。古代世界史の七不思議にはいるともい われる白村江の戦い。従来説は、唐王朝の圧倒的物量に破れた倭国は、あいつ ぐ遣唐使の派遣と唐に対する朝貢外交の展開と唐文化の摂取により滅亡を免れ たと説明してきた。 「大化の改新」「壬申の乱」と日本古代史の謎を解いてきた著者が白村江の謎に 迫ろうとした労作。唐・百済・新羅・倭のそれぞれの内部事情と国際関係を、関係 資料にていねいにあたりながら、この戦争の実像を浮かび上がらせ、唐の物量に 負けたのではなく圧倒的な物量を誇りながらも明確な戦略もないまま唐との決戦 に臨んだ倭国の姿勢にこそ敗北の原因があったことを明確に論証した。 しかしその論証ゆえに「なぜこの徹底的な敗北を喫した倭国が戦後どうどうと唐と わたりあい、独立を保ったのか」という疑念はかえってつのる。 著者は、「唐が対新羅戦争に倭国の援助を期待したから」との国際関係にその 原因を求めているが、壊滅的敗北をした倭国に援助を期待するとは、これはあまり に論拠が乏しい。むしろ、古田武彦のように、白村江を戦った倭国は大和王朝では なく、別の九州王朝であり、九州王朝はこの戦いを契機に亡び、この戦争の外野に いた大和王朝が倭国王権をにぎったからこそ、唐は「倭国」に対新羅戦争の援助を 期待したと見たほうが全ての謎を整合的に解く事ができる。 とはいえこの労作は白村江の戦いをリアルに描き出し、唐と日本との関係と朝鮮 諸国と日本との関係のを見直す契機を与えてくれる。 |
値段 | 660円 |