泣く子と地頭・・・関連書籍集
書名 平安王朝
著者名 保立道久
出版社名・出版年 岩波書店(新書)・1996年
内容・目次  序 「王の年代記」をめぐって
 T 桓武天皇とその子どもたち
   1.桓武天皇のイメージ
   2.桓武の子どもたち
 U 都市王権の成立
   1.「源氏物語」の原像―仁明・清和・陽成・高子
   2.王統が動く―光孝・宇多をめぐるドラマ
   3.延喜聖帝=醍醐帝と道真の怨霊
   4.「狂乱」の君
 V 「摂関政治」と王統分裂
   1.円融・花山の角逐と兼家の台頭
   2.一条と三条―道長の黄金時代
   3.「後」のつく天皇たち―爛熟への傾斜
 W 「院政」と内乱の時代
   1.院政の成立―後三条の登場
   2.白河王統の確立と摂関家の屈服
   3.内乱の時代へ
   4.後白河天皇の歴史的位置
 系図
 参考文献
 あとがき
解説  河内祥輔氏の労作「古代政治史における天皇制の論理」によって明らかとなった『天皇制の自己運動』のメカニズム。この『直系王統の確立』という天皇制の自己運動によって古代末期と中世前期の交錯する時代である平安時代を「王の年代記」として描いた労作。
 保立氏によれば平安時代政治史は直系王統の安定をはかるために天皇家の側からは常に「院政=公職としての天皇位を退いた、天皇家の家長としての院による自己の直系王統確立のための運動」を機軸として展開したという。しかしこの衝動は平安初期からあったものの院・天皇の早世というアクシデントによってかなわず、次善の策としてとられたのが「母方の叔父・祖父という家長による直系王統確立運動」としての摂関政治を生んだという見解に、新たな平安時代像が端的に表されている。
 また中世という時期の意味を探る点において重要なのは、氏の「武士」の性格にかんする見解である。
 氏は「武士の頭」として知られる「源氏」「平氏」は、「武門貴族」であり、かつ自身を『王家の一族』として自己認識していた。従って彼らの行動は自分が支持する王統の確立の爲に武力を用いて奉仕するというものであり、かれらが摂関家に仕えたのは摂関家が支持する王統の確立に自己も奉仕するためであるという主張が新鮮である。
 この観点から平将門の行動の意味や源満仲の行動、そして源頼朝の行動をとらえかえしてみると、中世前期における武士の行動原理とその頭の行動原理が違っていることが明確になる。
値段 680円

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