書名 | 鎌倉新仏教の誕生ー勧進・穢れ・破戒の中世ー |
著者名 | 松尾剛次 |
出版社・出版年 | 講談社(現代新書):1995年刊 |
内容・目次 | ○はじめに ・勧進の中世 ・穢れの中世 ・破戒の中世 ・神話の利用 ○第1章 官僧と遁世僧 ・官僧とはなにか ・出家 ・遁世僧の成立 ・親鸞、日蓮、道元らも遁世僧 ・叡尊も官僧から離脱した ・鎌倉新仏教とは何か ○第2章 白衣と黒衣ー袈裟の色のシンボリズム ・白衣と黒衣 ・黒は貴賎を区別しない ・官僧の制約(穢れの忌避) ○第3章 勧進の世紀 ・貴賎を論ず ・重源 ・栄西 ・忍性 ・勧進と説教節「さんせう太夫」 ・気骨ある住職のモデルは ○第4章 非人救済 ・非人とはなにか ・非人温室の移転問題 ・律僧と非人 ・文殊信仰による救済活動 ・念仏僧と非人救済 ・法然の神話 ・親鸞、一遍の救済神話 ○第5章 葬送の論理ー死者の救済ー ・葬式仏教の再評価 ・官僧と死穢のタブー ・「清浄の戒は汚染なし」 ・「往生人に穢れなし」 ・禅僧と葬送 ○第6章 女人救済 ・官僧の女性観 ・官僧の女人救済観 ・国立戒壇から排除された官尼 ・伝法灌頂からの排除 ・道元と転女成仏説 ・法然教団による女人救済 ・法然の女人救済 ・律僧、禅僧による尼寺の創建 ・道元門下の女流済度 ・尼戒壇の樹立 ・親鸞教団と女人救済 ・女人不浄観と遁世僧 ○第7章 鎌倉新仏教の思想ー親鸞と叡尊ー ・「個人」の救済 ・官僧仏教の思想 ・新仏教の祖師たちの思想 ・一元と多元 ・自力と他力 ・親鸞と叡尊の比較 ・成仏か往生か ・持戒と破戒 ・現世観 ・国王との関係 ・「個」の救済 ○第8章 中世都市の成立と「個」の自覚 ・都市的な場 ・法然、道元と平安京の都市民 ・鎌倉と一遍 ・日蓮 ・遁世僧たちの鎌倉 ・親鸞と農民 ○おわりに ・古代から江戸時代までの仏教史概観 ・第一個人宗教から第二個人宗教へ ・「破戒の世紀」から「無戒の世紀」へ ・日本人のターニングポイント |
解説 | 本書は、鎌倉新仏教の祖師たちがすべて一度は官僧であったもののそこから遁世していることを手がかりにして、新仏教の存在を意味を探っている。そしてそれは従来新仏教の対極にあり、王朝や幕府などの権力者におもねっていると認識されていた「律宗」の叡尊らにおいても同じであることを明らかにし、当時の社会相と官僧の任務の乖離から新仏教が生まれたことを明らかにする。 本書の結論は、鎮護国家を任務とし常に「穢れ」を嫌う官僧には、律令国家の変質と共同体社会の解体から生まれた都市にあるまる令外の民を救済できなかった。この新しい都市的な場に住まう「個人」としての民の救済を任務として新仏教は生まれたというもの。ここには中世が、市場経済の発展に伴って共同体から離れた「個人」を大量に生み出すと共に、従来の宗教的観念の世界では把握できない事態が社会において進行していたことが物語られている。 |
値段 | 650円 |