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書名 源平合戦の虚像を剥ぐー治承・寿永内乱史研究ー
著者名 川合 康
出版社・出版年 講談社(選書メチエ):1996年刊
内容・目次  ○はじめに
 ○第1章 武士再考
  1.歴戦の老武者の嘆き
  2.武士の芸能
 ○第2章 「弓馬の道」の実相
  1.壮士等耳底に留むべし
  2.馬をめぐる諸問題
  3.戦闘様式はなぜ変化したのか
 ○第3章 源平の「総力戦」
  1.治承・寿永内乱期の「城郭」
  2.中世工兵隊ー民衆動員の軍事的意味
 ○第4章 飢饉のなかの兵糧調達
  1.軍勢の路次追捕
  2.制札の成立
 ○第5章 鎌倉幕府権力の形成
  1.内乱期の御家人制
  2.「反乱体制」の一般化ー荘郷地頭制の展開
 ○第6章 奥州合戦
  1.内乱の延長
  2.空前の大動員
 ○注
 ○あとがき
解説  本書は、「屍を乗り越えてすすむ坂東武者。文弱の平家の公達。こうした従来の源平合戦のイメージは本当なのか」との疑問に答える書。近年の中世遺跡の発掘成果をふまえて、平家物語や諸資料の読みなおしを通じて、当時の合戦の実相に迫る。
 本書で明らかになることは、中世の戦闘が、民衆の大量動員によって成り立っていたこと。それは、従来の「職人」としての軍事貴族である武士(大名と呼ばれる貴族)だけではなく、合戦に、上層農民とでもいうべき土豪・武装農民が大量に加わっており、この層(小名とよばれる)が主な戦闘力となっており、これが後の鎌倉御家人層の中核をなしていること。またこの戦闘の主力が変化したことに伴い、戦闘が草原での一揆討ちではなく、大規模な攻城戦となり、それゆえ大量の工兵としての農民の徴発を伴っていたこと。こういった中世の特徴が、すでのその始まりである、治承・寿永の乱ですでに基本的な性格となっていたことを明らかにしている。
 このことから逆に平家物語の資料としての性格が浮き彫りになる。平家=滅び行く貴族・源氏=勃興する新しい権力という観点で、平家物語の記述はなされており、それゆえに不当なまでに平家の弱さが語られていることが見えてくる。
 しかし同時にまた、平家物語の個々の記述は、かなり正確であることもまた浮き彫りになる。例えば著者は、発掘により当時の馬の馬体の高さをほぼ1メートル20から30センチと推定したが、名馬と呼ばれた馬などは、平家物語の記述から、その馬体の高さは、およそ1メートル40センチであることがわかり、この体の大きさゆえに名馬であることを論証する。
 このことは、平家物語の個々の記述が正確であることを示しているし、平家の流れである源平盛衰記で、畠山重忠が、一の谷の合戦のおりに背後の崖を馬で駆け下りる時に、馬をかばって、馬の前足を自分の肩にかけさせて、徒歩で下ったという記述が、リアルなものであることを浮き彫りにする。
値段 1500円

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