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書名 吾妻鏡の方法ー事実と神話に見る中世
著者名 五味文彦
出版社・出版年 吉川弘文館・1990年
内容・目次  はしがき
 序章 『吾妻鏡』の時代
 第T部
  1.『吾妻鏡』の構想
  2.合戦記の方法
  3.『吾妻鏡』の構成と原資料
 第U部
  1.源実朝ー将軍親裁の崩壊
  2.鎌倉前期の幕府法廷
  3.執事・執権・得宗ー安堵と理非
 後記
解説  この本は、同じ著者による平家物語の歴史的構造を分析した書物に続く論考で、中世の基本資料の一つである「吾妻鏡」の歴史的性格を分析し、その分析を基礎にして、鎌倉時代政治史を読み解こうと言う、意欲的な試みがなされている。
 著者によれば「吾妻鏡」とは、鎌倉幕府の歴史を公正に記述したものではなく、執権北条氏の覇権の歴史的根拠・その正統性を述べるために編纂されたものである。それゆえ構成としては、幕府成立の大義名分上の根拠である以仁王の令旨を巻頭に載せて、最後は皇族将軍である宗尊親王が京都に送り返されたところで終わる。史実としてはこれ以後も皇族将軍は幕府滅亡まで続くわけだが、親王(以仁王は王であるが本人は親王と名乗っており、彼の背後には、当時の正統王朝派である鳥羽系の皇族集団があったと考えれば、親王という彼の主張には根拠がある)の令旨にのっとって王権を守る武装集団として始まった幕府が、その後の歴代の源氏将軍家の暗殺と承久の乱によって王朝権力からの自立をはかり、乱後に派遣された宗尊親王を謀反の疑いで京都に送還することで、王朝権力からの自立を完成した事実に依ってみれば、吾妻鏡の構成には根拠があることになる。
 著者は鎌倉幕府の歴史は「王殺し=王権からの自立」の歴史であるとの分析にたち、そのことを幕府における法制や所領安堵の実態などを検証することを通じて、幕府における権力が将軍→宿老→執権→得宗へと移っていった事実を掘り起こしている。
 また興味深いのは源実朝の章で実朝が将軍への権力の集中を図って行く過程を幕府の諸文書の変遷過程を分析しながら跡付け、彼が御家人勢力によって暗殺されざるをえないことを証明していることである。
 幕府と将軍・執権・得宗のそれぞれの関係と役割・性格を考える上で格好の書である。
値段 1500円

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