黄金の島・ジパング3時間目:「神の名」の下に


 まず最初に「来航したヨーロッパ人を現地の人はどんなふうに扱ったか」を考えてみよう。コロンブスがアメリカ大陸に行ったとき現地の人はどんな

態度で迎えたっけ。

 「すごい歓迎をした」 どんなふうに? 「何かいろんな物をあげていたよ」 じゃあ、教科書の絵を見てみようよ。

「あっつ、ほんとだ。いろんな物をあげている」 どんなものをあげているかな?。「首飾り」「頭に載せる冠かな?」「カップもあるよ!」「カップかな?」

「お酒入れるあれじゃないか」「あっつ、グラスだ」「そうかもね」・・・・・・・(生徒たちは絵を詳しく観察し口口に叫んでいる)

 じゃあ問題だ。『なぜ現地の人はヨーロッパ人を歓迎したのか』。「えーっつ。かんたんじゃん」「そうかな?」 いろいろあるかもしれないけど絵を良く

観察して考えて自分の考えをノートに書いてごらん。(ノートに書く音)・・・・・・・・・・・

 では、みんなの考えをきいてみよう。

「なんか強そうだから、逆らうと危ないと思ったから」 どうして?「絵で見てると鎧とか兜とかつけて鉄砲も持ってるじゃない。インディオはハダカみた

いで弱そう」 なるほど。他には? 「すごい立派な服着ているから、歓迎して何かもらおうと思ったんじゃないか」「今までほかの国の人が来たことな

いからめずらしくてかんげいしたんじゃあないの? 」 なるほど、他には?

「神様に間違えたんじゃないの?」 どうして? 「絵で見るとコロンブスの後ろで十字架を立ててるよ。十字架はキリスト教の印だから」「それにすごく

立派な服も着ているしさ」 なるほど。じゃあ、今の意見のどれにみんなは賛成?(これは意見が分かれた。少し神が多いみたい)

では、資料を見てみよう。ヨーロッパ人がはじめて南アメリカのインカという国に行ったときの記録だよ。

 <黄金の島・ジパング>資料B「インディオの見たスペイン人」
  1. スペイン人到着をインカ王につげたインディオの言葉

    王様! 私どもがはるばる当地までやって来ましたのは、

      これまで私どもの国では見たことも聞いたこともない類の

      人々が、あなたさまの国にやって来たことをお知らせする

      ためでございます。

       王様! 間違いなくなく彼らは神であります。と申しますのも

      彼らは風に乗ってやって来たと告げておりますし、またたい

      そう立派なひげをたくわえ、肌は白く、銀の食器で食事をし

      ているからでございます。さらにその上、彼らは銀の足をし

      た、とてつもなく大きな羊の背に乗り、まるで天上にとどろ

      くような稲光と雷を発するからでもあります。

       さらに、私どもは、彼らが白い布切れを手にして独り言を

      つぶやいたり、誰一人何も言っていないのに、ただ目の前に

      あるその布切れを見ただけで、私どもの仲間の名前をいくつ

      か間違わずに呼んでいる光景を目の当たりにしたのでありま

      す。

       そのうえ、外からは彼らの両手と顔しか見えず、身にまと

      っている衣服も、あなた様のよりはるかに立派でございます。

       つまり、彼らの衣装には、金糸や銀糸で装飾が施されてい

      るのでございます。

       このような人たちは神以外の何者でありえましょうか。

        (岩波書店刊「インカの反乱」より)

「神様に間違えたんだ」 そうだよ。ところでなんで間違えたのかな? 

「風に乗ってやってきたと告げているから」「とてつもなく大きな羊の上に乗っているから」「稲光と雷を発するから」「白い布切れを見て独り言をつぶや

くから」「立派なひげをたくわえ肌は白いから」・・・・・・・・・・

 そうだね。ところで風に乗ってきたというのはほんと? 「船に乗ってきた」「風で動く船だ」「だから風に乗ってきたと言ったんだ」 そうだね。というこ

とはインディオは大きな風で動く船を・・・「見たことがない」 そういうことだ。じゃ、とてつもなく大きな羊って? 「馬?」 そう。当たり。じゃあその馬が

銀の足をしていると言うのは何?。「ひづめ?」 うん。ひづめじゃなくて、それにつけた・・「U字型の金属・・・なんていったっけ」「蹄鉄」「それだ!」

そうだね。つまりインディオは馬を見たのは・・・「初めて!」 そうだ。では、稲光と雷とを発するって?。

「鉄砲?」 そう。鉄砲。「どうして?」 昔の鉄砲は大きな音がして、銃口から火が吹いたんだ。「それでか・・・」 といことはインディオは鉄砲を見たの

は・・・・「初めて!」 そう言う事だね。それでは、この見ながら独り言をつぶやいたって言う白い布は?。・・・・・・・・・・・・・・・・

「紙?」 そう。紙。じゃあ、独り言をいったっていうのは? 「紙に字が書いてあったんだ」 そのとおり。字を読んでいたんだね。つまりインディオは字

と紙を・・・「見たことがない!」 そう。不思議な事をする人たちなので、それで神様または神の使いだと感じたんだね。

 「じゃあ。肌が白くというのは?」 うん、それはね。インディオの伝説では神様は白い肌をしひげを生やしていたというそうだ。「それで、勘違いした

んだ」 そう。そしてヨーロッパ人の前にたくさんの贈り物。とりわけ金や銀の財宝を積み上げたと言うわけだよ。

 ではここで問題。『大量の金銀を見たヨーロッパ人はどうしただろうか?』

「うーん。もらった」 それだけ? 「もっと欲しいと言った」 それだけ? 「えーっつ。もっとやったの?」 そう。もっとやった。何を?

「もっと出せってインディオを脅した?」 そう。どうやって?。 「鉄砲で?」 そう。インディオの王様たちが歓迎の席でお酒を飲んで酔っ払ったところ

でいきなり王様を人質にして「家一軒分の金銀を持って来い」と脅したんだ。「インディオは持ってきた?」 持ってきた。「王様は釈放されたの?」 

釈放されたがまたしばらくすると同じことの繰り返し。「インディオは怒らなかったの」 当然怒るね。どうする? 「武器を持ってきてヨーロッパ人を襲

う」 そうだね。でも勝敗は? 「ヨーロッパ人の勝ち!」 なんで?。 「ヨーロッパ人には鉄砲があるけど、インディオにはない」 そのとおりだね。で

もその後インディオたちは何十年もヨーロッパ人と戦ったんだ。山の中に隠れてヨーロッパ人と戦った。でもだんだんじり貧になって、最後は征服され

ここは植民地になった。じゃあ。植民地になったアメリカがどうなったか。資料集で見てみよう。

(資料集:銀鉱山と砂糖農園の図。そしてその結果急激なインディオの数の減少のグラフ)

 鉱山や農園で働くインディオがいなくなってしまった。どうしたと思う?。

「自分で働いた?」「まさかあ」「働く人を連れてくる?」 どこから?。ヒント。今アメリカにはヨーロッパ人の子孫の肌の白い人たちと、インディオの子

孫の肌の僕たちと同じ人たちと、もう一つ違う肌の色の人たちがいるね。

「黒人?」 そう。肌の黒い人って他にはどこにいる?・・・・・・・・・・・。

「アフリカ?」 そう。アフリカだよ。「アフリカからつれてきたの?」 そう。「どうやって?」 じゃあ、教科書にとても詳しい資料があるから、これを読ん

でみよう。

深める歴史6 奴隷貿易

いまの私たちには,「人が商品のように売買された」ことを信じること

はできないでしょう。しかし,かつての世界では,この非人道的な売買

がひろくおこなわれていたのです。とくに16世紀から19世紀にかけて

は,アフリカからたくさんの黒人がヨーロッパ人によって奴隷として「輸

出」されているのです。その人数は,1,500万,あるいは5,000万と推計

するなど,諸説があります。また無事にアメリカ大陸の港についた人数で

みても,950万にも達するともいわれています。なんのために,どこに

黒人たちは連れていかれたのでしょうか。

@ヨーロッパの商人は,アフリカの部族の王や黒人の奴隷貿易商人から奴

 隷を綿織物やガラス・金属器・鉄砲などと交換して手にいれた。

A部族の王は他部族の黒人を戦いによって捕虜として,ヨーロッパ人にひ

 き渡した。そこからアフリカの諸部族のあいだに抗争がおこった。

Bとらえられた奴隷たちは,首かせなどをはめられて,年齢や病気の有無

 が検査され,合格すると胸や腕に焼印を押された。各奴隷商人はおなじ

 船に奴隷たちを乗せたため,焼印はあつかい商人の印にもなった。

C奴隷たちは,鎖につながれて,ぎゅうぎゅうに船につめこまれた。ある

 記録によると,ひとりあたりの空間は,長さ180cm,幅40cm,高さ80cm

 にすぎなかったという。ふつうで2-3か月かかる航海では,水や食糧がな

 くなったり,病気にかかったりして死亡する奴隷も多かった。また海賊に

 あったり難破したりする危険もあった。そのため,奴隷たちの反乱もおこ

 った。

D奴隷たちが連れていかれたのは,おもに南北アメリカ大陸であった。15

紀の末にコロンブスが西インド諸島に到達したのち,16世紀なかばに

 は南アメリカの大部分はスペインによって,ブラジルもポルトガルによっ

 て征服された。

Eこの地域では砂糖きびの生産や余銀の採掘が先住民を使っておこなわれて

 いたが,人手が足りなくなり,黒人が奴隷として連行されるようになった。

 こうしてとくにカリブ海諸島には,黒人奴隷を使った大規模な農園が発達

 し,のちには北アメリカの綿花栽培にも奴隷制度が導入された。

F奴隷貿易は19世紀までつづけられたが,アフリカではおもに労働力となる

 青年層が大量に流出したため,社会の発展がおくれることになった。また,

 のちにアメリカ合衆国などでは黒人差別問題がおこった。

 「うーん。ひどいな。アフリカの人も騙されているって感じだね」 そうだね。じゃ、だまされた人々がどんな気持ちだったか。資料を見てみよう。

スペイン人に対するインディオの怒り

 お前たちはわれわれのつかえている王をとらえて苦しめているが、王が何をしたというの

だ。王はわれわれの意思 に逆らってでも、お前たちを

この国に導き入れた。それなのにその親切ををこのような形で返すのか。

 王はお前たちに大いなる敬意をあらわし、お前たちを丁重にもてなし、館2軒分の金銀を

贈ったではないか。

 お前たちがこの国の都に入ったとき、王は宿舎・土地・召使・女・田畑を提供し、われわ

れがお前たちに貢物を納めるように命令し、われわれはその命令を実行した。

 お前たちはわれわれ全てから妻子を奪い、われわれの部下は身にまとうマントで汗や泥

にまみれたお前たちの馬をふいたり、お前たちの宿舎を清掃したりまでつくしたではない

か。これ以上何をしろというのだ。

 お前たちは神の命令で風に乗ってやってきたとか、神の御子だと語り、またこの国に来

た目的は、王につくし、王をこよなく愛し、王とその部下をわが身同様に遇するためだとか

言いながら、王をだましたではないか。

 胸に手を当てて考えればわかることだが、お前たちは一方的に約束を破り、王を苦しめ

た。王が何をしたというのだ。

 すでに王はこの国にあった金銀をことごとく差し出したではないか。われわれから宝石ま

でとりあげ、この国の富すべてをお前たちにさしだしたではないか。

 お前たちは「たがいに平和に暮らそう」という王の提案を受け入れ、これ以上何も要求し

ないと約束したではないか。

 この国のものはお前たちの所業を目にして、驚きあきれ、ついには口にすべき言葉もわ

からずとほうにくれている。

 この国のものたちは絶望して自ら首をくくるか、お前たち全てを破壊してしまうかのいず

れしかないと言っている。

 われわれや王がこんなにも苦しんでいるのはお前たちのせいだ。これ以上王を苦しめる

な!

                (岩波書店刊「インカの反乱」より)

じゃあ,最後にノートの「ヨーロッパ人の他国侵略のしかた」に言葉を入れて完成してみよう。

★ヨーロッパ人の他国侵略のしかた

 @〔      〕の利益で現地の王たちをてなずける。

 A〔      〕の使者だと名乗り現地の人たちを信用させる。

 Bすきを見て(現地の人々が互いに争ったりするのを利用して)軍隊を出して征服する。

@のかっこは。アフリカの場合を考えてみると・・・・・・・・。「ガラス」「鉄砲」 「奴隷と交換する」 そう言う事をなんという。「交換」「貿易」

そう、貿易だね。じゃあ、Aは。「神!!!!」。そうわかったね。では今日は終わり。次は日本にヨーロッパ人がやってきたとき日本人はどう対応し

たかを見てみよう。

 


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