ワークシェアリングについて@ −問題提起(アイさんより)−


 〜 ワーク シェアリングという選択肢(前編) 〜
 今回は、メディア リテラシーに引き続き、ワーク シェアリングについてご紹介したいと思います。いずれも、社会問題を考察してい
く上で、比較的具体化しやすいということと、今後、世論の焦点となり得る要あるためです。また、これらを単体で捉えるのではなく、
あらゆる社会事象と連鎖しているということと照らし合わせ、なぜ、ワーク シェアリングなのかをご理解いただければと思います。
 ワーク シェアリングとは、以前にも述べましたが、「雇用難対策の一環として、雇用を維持、確保するために仕事を分かち合う」とい
うのが一般的な定義ですが、ここでは、さらに拡張して話を進めようと考えています。 
 はじめに、社会背景から触れていきたいと思います。
 『 勤労とは、生活を、そして社会を支える、かけがえのない営みです。 』
 不況、リストラなどの失業問題の一方で、“仕事が生きがい”というのとは別に、心身共に過酷な労働条件のもとに従事している人が
存在するのも事実です。この悪循環が示すように、既存の就労形態では、飽和状態に達していると言えるのではないでしょうか。
 同時に、「個人」というキーワードが関心を高める中、社会性を保ちつつ、人として生を受け、それぞれが思い描く人生観を自分の人
生に反映させるには、多様な気質・個性にともなった人生設計の選択肢を、さらに広げることが可能な社会システムの実現に向けて、本
格的に取り組むべき地点に来ていると言えるでしょう。それから、忘れてならないのは、職種によって、また立場や環境によっても事情
は異なるということです。よって、多角的、複合検証していく必要があります。
 これらのことを踏まえて、経営側、労働者側の垣根を越えた、これからの時代にふさわしい就労の在り方について、模索する必然性を
迎えているのです。
 次に、ワーク シェアリングに関する、具体的な内容を見ていきたいと思います。ご存知の方も多いと思いますが、現在は、ワーク
 シェアリングの参考資料となるものが少ないため、新聞から抜粋した最近の動向を要約したものを記載いたします。

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【ワーク シェアリング関連、新聞記事抜粋】
 今年の春闘方針で日経連は「柔軟なワーク シェアリングを検討していく必要がある」と発言。日本も、雇用・働き方を考え直す時期
にあることから、ワーク シェアリングの導入に注目が集まり、今後、具体化への議論が重要になりそうだ。
● 背景と実例
 ワーク シェアリングは不況下にあった70年代の欧米で、失業対策として脚光を浴びた。ヨーロッパにおいて一早く導入され、94年
にはドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンが、週休2日制から週休3日制に変更。また、フランスは、2000年2月から、週35
時間労働を法制化した。日本では、99年6月にトラックメーカーの日野自動車工業が、一部門の55歳以上の社員を対象に、一日8時
間の所定内労働を7時間に短縮した「短時間勤務制度」を導入。2000年3月までの時限措置だったが、“今後の反応をみて制度として定
着できないか検討したい”と延長の可能性も示唆している。
● 問題点
 ・研究、サービス部門など職種により、時間で働く概念はなじまない。
 ・労働時間の短縮が、単純に賃金の引き下げに結びつけられる。
 ・安易なワーク シェアリングは、生産性を低下させ、企業の競争力も弱まりかねない。(例えば、熟練した労働者が8時間かけてや
  っていた仕事を、不慣れな労働者2人が4時間で出来るか。)
 ・ワーク シェアリングを導入しやすい分野では、既に派遣社員やパートタイマーが担っていることから、これを進めると、正社員と
  それ以外の労働者の賃金の2極分化傾向に拍車をかける恐れがある。
● 展望
 ・経営側の求める労働力の高コスト構造の見直しと、労働側の求める多様な働き方の双方を実現させる可能性がある。
 ・将来的には、少子高齢化で、労働力不足が予想される中、女性や高齢者の雇用の場を創出する利点を持っている。
 ・公的年金の支給開始年齢の引き上げなどに伴って、定年後は、週3・4日の出勤ができれば理想的とする意見も、ワーク シェアリン
  グを導入すれば雇用延長が比較的容易になり、理解を得やすい。
 ・アメリカでは、専門職や経営トップの労働力までが流動化し、ベンチャー企業の隆盛に役立っていることから参考にしたい。
                    (新聞記事引用部分以上)
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“理論と実践との壁”これは、何事においても生じてくる問題ですが、ワーク シェアリングに関しても同様で、以前にも「理念が先行
していて・・・」と申したように、なかなか実現困難な課題が山積しています。
 お気付きのように、おおまかに以下の課題が挙げられます。
 1.賃金と時短の兼ね合い
 2.根本からの経済システムの再構築
 3.職業意識の向上と職能・技能の養成
 4.ワーク シェアリング導入に向けての環境整備
  5.社会保障の充実など
 最も大きな壁は1,2でしょうか。なかには、賃金が多少減っても、社会不安となっている失業問題を解決させるべき、また、時短を
優先させるべきという意見もあります。しかし、これまでの流れをみても、多数の人々は、賃金が減ることに対して納得材料が充分に揃
わない限り、快諾しないでしょう。
 そこで、社会全体を通して考えた時、場当たり的かつ安直な効率主義に惑わされることなく、長期的展望でこれらの課題に対処し、向
き不向き、適性などにも配慮した「役割分担的社会構造」を組み立てる一環として、ワーク シェアリングの意義が問われてくるのでは
と考えています。
 “役割分担”というと、何か押しつけがましい響きがありますが、そうではなく、メディア リテラシーの回でも触れましたが、
「十人十色」といわれるように、複雑で多様な気質、価値観の人々が共生できる新たな社会構造を視野に入れたものです。
 こういったことからも、皆が一様に同じ役目を担うというのは、むしろ不自然ですし、建設的でもないので、この多彩な人々の個性を
存分に活かすということから、この発想に至りました。
 人生観は人それぞれですし、各個の事情や環境などにおいても同様でしょう。
 皆さまに伺いたいことがあります。
 日々の生活の中で、「雇用・就労」についてお考えになることはありますか?もし、あるとしたら、それはどのような時、状況ですか。
また、無いという方は、なぜ、無いのでしょう。理由はいろいろあると思いますが、“ 仕事に懸命に打ち込みたい、趣味は仕事である、
仕事は生きがいだ・・・ ”
 また、仕事に限らなくても“ 何かに集中している状態が好き、完全燃焼したい、成果を出したい ”という方や、“ 目的・目標がある
ので、そのために働いている ”という方もいらっしゃると思います。
 そして、「何不自由なく生きて働けるだけで幸せである」と感じる方も・・・
 今日の就労形態が形成されるまでの経緯に関しては、またの機会に譲りますが、“今”という時点は、歴史という絶え間ない時空の連
なりの突端であるわけです。過去を振り返ったとき、身震えするほどの悲惨で衝撃的な「戦中・戦後」を、辛苦辛労をしのいで乗り越え
られてきた先人の、想像をはるかに絶する努力に、敬意の念を抱くとともに、決して忘れてはならないことと認識しております。
 確かに、ある意味においては、現在は恵まれていると言えるでしょう。
 しかし、昨今の世界を取り巻く事件、諸問題を思い出してみてください。経済先進国においては、どんなに物品に恵まれようとも、
その一方で人々の心は荒み、人間社会は病んでいくばかりではないでしょうか。
言うまでもなく、それらは複雑に絡み合う問題が多く、まして、一括りにして片付けられるとも思っていませんが、大きな起因、或いは
一因として、それは、「心にゆとりが持てない」ということが、影響していると考えられるのではないでしょうか。当然ながら、単純に
“ 時間の余裕=心のゆとり ”だと言っているのではありません。
 やはり、生活の満足度と時間的余裕のバランスが求められるのでしょう。
 これまでの経済至上主義・物質主義に慣れきってしまったこの感覚とは、今後、少し離してというか、また別の観点からも捉えてい
った方がいいかもしれませんが、しかし、それによって、今日の生活が激変するということは、考え難いと思います。
 なぜなら、これまでが偏りすぎていたというだけだからです。
 また、競争原理の落ち込みを懸念される方もいらっしゃるかと思いますが、私見としては、人間の“競争本能” から、憂慮する事態
にはいたらないと楽観しています。
 それに「競争」といっても、今後、仮に現在よりも価値観の多様化が浸透するとしたら、人々の指針が様々な方向にむくと推測できる
ので、これまでのような一元的で激しいものではなくなるようにも思われます。
 しかし、基本的な社会摂理なので、別の機会を設け、細分化して検証できればと考えています。
 ・・・ 憚らずに完全理想形を述べると、「生活を停滞させない程の報酬を得られる経済システムと、時間的ゆとりある就労形態の
  成立および、充実した社会保障の整備」
 それには、既存の『社会構造の核心部分』から練り直していかなければならないのは必至でしょう。また、当然、これまでの全てを
否定しようなどとは考えません。継承すべきは引き継ぎ、活かせるところは活用し、決めつけや諦めの前に、可能な限り改善して、将来
に渡って智恵を出し合い、工夫を重ねて創り出していきませんか・・・
 余談になりますが、私はかつて、平均睡眠時間が2・3時間という時期がありました。経理(2人分)、事務、庶務、秘書といった職務
を一遍に担っていた当時は、まるで機械かロボットのような生活でした。
 そんな中、過労が重なり体調を崩した時に、ふと、顧みたことがありました。それは、人の「生涯」でした。
 母は、私が22の時に他界したので、その濃く短い一生を遂げた母から、『 時間の尊さ 』を教わりました。
 当初は無意識ながら、そこから自然発生的に「人生」について考え始めるようになり、さらに派生していって、社会を組成する個人
個人の意識や価値観などの内面構成の仕方にも興味が及び、これに加えて、現社会体質を踏まえ、その一端として、ワーク シェアリング
的な思索に至りました。
 現在は、主婦となって2年が経ち、“無償の労働”と言われる家事と(家事と一言でいっても、これが結構、幅と奥行きがあるのです)
情報管理に関わる仕事をしています。守秘義務というのがあり、具体的には申せませんが、プログラムされた端末を用いて、「□□情報
を正確かつ最新の状態で管理し、合理的な安全対策を講ずる」という規定に基づく業務に携わっています。
 そして、ライフワークとして、長期的視野に立った社会システムの考察と連結した、多様な価値観の認容を含む、今日的なコミュニケ
ーションの研究・構想を続けています。
 今回、ご紹介したワーク シェアリングは、日本において一般的に議論され始めてまだ日が浅いことから、今後は、理念をどのように
発現していくかが、焦点となってくるでしょう。
 私の活動も現時点では、問題提起に留まっています。
 最後に、以前、すまさんから「雇用を分担するというよりも、情報通信や外国との係わり合いの中で新しい雇用を創出する方向の方が
良いと思います。」というご指摘がありましたが、無論、そのような新たな創出も含めて、雇用、労働とそこから連動するすべてを巡り、
皆さまのご意見を広く伺えましたら、何よりと存じます。

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