<つるばみの衣>C 律令国家を動かしている のは誰?
教師:さて今日は、律令国家のしくみについてすこしくわしく学習して行きます。その前に復習として、ノートの最初の問題に答えましょう。
(ノートの問いに各自答える)
○律令国家の特色は:@【 】中心の政治 A全国から【 】や【 】が【 】の所に集まる。 B【 】だけに良いしくみなので力のある【 】が反対! |
教師:じゃあできたかな?。・・・・・では確認しよう。律令国家の特色は、誰中心の政治?。
生徒:「天皇!!!!」
教師:そうだね。・・では次。全国から何と何が集まるの?。
生徒:「税!!!!」「兵士!!!!!」
教師:そのとおり。・・・・で、それは誰のところに集まるの?。
生徒:「天皇!!!!!」
教師:そうだね。天皇。・・・・・だから律令国家は誰だけに良いしくみなの?。
生徒:「天皇!!!」
教師:はい、正解だね。・・・・・・で誰がそれに反対したのかな?。
生徒:「豪族!!!!!!!」
教師:そうだね。・・・・・でもなんで豪族が反対するの?。
生徒:「自分の土地をとられるから!!」「自分の民もとられるから!!!」「王様じゃなくなっちゃうから!!!!!」
教師:そのとおりだ。・・・・・・・・ということで前回の授業は終わったけど、律令制国家は本当に天皇中心の国なのかどうかを今日は考えてみたい。
律令国家のしくみをもっとくわしく書いた資料をつくったので見てください。(資料D律令制のしくみを配布)
教師:では、説明するよ。・・・これは天皇と役所の一番上のしくみである太政官の関係をしめしたものです。
生徒:「太政官ってなんですか?。」
教師:それはね、政治の方針を決めて、下の役所を動かす所なんですよ。
生徒:「政治の方針?。」
教師:うん。細細したことではなく大事なことや、政治の進め方を決めるところなんだ。そして決まった方針にそってさまざまな役所を動かして政治を
行うところでもあるんだ。
生徒:「じゃあ、すごく大事なところだ。」
教師:そう。律令国家の中心だね。でこの太政官の中のしくみは3つの役所に分かれていて、議政局という方針を決めるところと、弁官局というその
方針に基づいて役所を動かす所、そして以上の動きに必要な文書を作る外記局の3つに分かれているんだ。
生徒:「ふーん」
教師:だから太政官の中心は議政局だ。ここは定員が決まっている。まず一番上の左大臣。
生徒:「一番上は太政大臣じゃあないの?。」
教師:うん。太政大臣は臨時に置かれるものなので普通は左大臣が一番上で定員が1名。次が右大臣で1名。その次が大納言で3名ほど。次が中
納言で同じく3名ほど。最後に参議というのが2・3名というぐあいに決まっている。
生徒:「10人ぐらいしかいないんだ。」
教師:そう。10名ほどの小人数。あとの弁官局や外記局はそれぞれ数十人。こういうわけだね。
生徒:「どんな人が太政官に入れるの?。」
教師:良い質問だ。・・・資料の一番上に書いておいたけど貴族、五位以上の位をもった人の事を貴族と呼ぶのだが、その貴族しか入れない役所な
んだ。
生徒:「貴族って前の時代にはなんだったの?。」
教師:とても大事なところだね。・・・・・・豪族。つまり中央や地方の有力な豪族と天皇の一族が貴族になったんだよ。いいかな。
生徒:「はい。わかりました。」
教師:で、この太政官と天皇の関係なんだけど、天皇が命令を出すときと大事な事を決めるときの二つの場合を見ていこう。・・・最初に天皇が命令
を出すときだけど、最初に役所が天皇の考えを文書にし、その文書に言葉の間違いがあれば外記局が直します。そしてさらに内容に問題があ
れば弁官局が直します。
生徒:「えっ、内容まで直しちゃうの?。」
教師:そう。直します。そしてそれを議政局で話し合い、問題なところは直したものを天皇に出し、この文書で命令をだいしてよいか聞くんだ。そして
天皇がその文書でよいといえば、弁官局から各役所に天皇の命令として出される。
生徒:「よくないと言ったら?。」
教師:議政局と天皇の話し合いになり、意見が一致すれば命令として出す。
生徒:「へー、勝手に命令を出せないんだ。」
教師:そういうことです。・・・・で、次に大事なことを決めるときだけど・・・・・・
生徒:「大事なことって何ですか?。」
教師:うん。そこが大事だね(笑い!)。それは冷害などで作物が取れないことが予測されたときとか大臣などを決めるときとか、その他軍隊を動か
すときなど政治上大事な問題を決めるときだ。
生徒:「冷害のときがなぜ大事なの?。」
教師:冷害がひどいと作物がとれないから税金をへらしたり、国で使う分を減らしたりしなければいけないだろ?。
生徒:「あっつ、そうか。」
教師:そういうときは役所から出されたことをまず弁官局がまとめ、次にそれについて議政局が話し合ってだいたいの方針を決め、その上で天皇の
意見を聞き、天皇と議政局の意見が一致したら決定で、弁官局がそれを役所に命令する。
生徒:「もし天皇と議政局の意見が合わなかったら?。」
教師:なんども文書が往復し、最後は直接話し合って決めるんだよ。
生徒:「へー、ここでも話し合いなんだ。」
教師:そういうことだね。・・・・・・・・・じゃあ、ノートの問題には答えられるね。
@政治のしくみを考えよう! 【1】天皇が命令を出すとき誰が認めないと出せないか。 【2】大事な事は誰と誰の意見が一致しないと決められないか。 |
(各自ノートに答えを書く)
教師:・・・ではいいかな?・・・・・・・。天皇が命令を出すとき誰が認めないと出せない?。
生徒:「太政官!!!」「議政局!!!」「弁官局も!!」
教師:そうだね。・・・・・・・では、大事なことは誰と誰の意見が一致しないと決められない?。
生徒:「天皇と議政局!!!!!」
教師:はい、正解です・・・・・・・・。ところで太政官と言う役所の役人になれるのはどんな人だっけ。
生徒:「貴族!!!!」
教師:そうだね・・・・・・・。ということは、律令国家を実際に動かしているのは誰と誰?。
生徒:「天皇と貴族!!!!」
教師:そういうことだね。・・・・・つまりこの図では天皇が太政官の上にあるけど、実際は太政官と天皇はどんな関係に置くといいかな?。
生徒:「横!!!」「横に並べる!!!」
教師:そのようだね。
生徒:「はい、意見があります。」
教師:○○さん。なんですか。
生徒:「はい。天皇と太政官を横にしなくてもいいとおもいます。たしかに天皇と太政官の議政局の意見が一致しないと決められないけど、いつも最
後に天皇の賛成がないとできないんだから、やっぱり天皇のほうが上だと思います。」
教師:あっつ、するどいね・・・・・・。そうだね。天皇のほうが上だね。・・・・・・でも天皇と議政局の意見の一致が常にいるんだから、両方が共同で国家
を動かしているといってもいいんじゃあないの?。
生徒:「それは、そう思いますが、一応天皇のほうが貴族より上です。」
教師:そうだね。そのとおりだ。・・・・・・・・・・じゃあ、次にこの貴族の生活を見てみよう。・・・・・・資料集のp29をあけてください。貴族の特権というとこ
ろです。
教師:そうそう。この図に大きな間違いがあるんだ。
生徒:「えっつ、どこに?。」
教師:ここでは貴族が従三位以上になっているでしょ?。
生徒:「あっつ、ほんとだ!!!。五位以上じゃあないの?。」
教師:そう。五位以上が正解・・・・・。だからこの図の「上級役人」という言葉を消してここも貴族にしてください。・・・・・・そして、そこの「下級役人」のと
ころが豪族たちで、地方で一番偉い豪族でもこの六位以上にはなれないんだ。・・・・・・・・そして一番下の「無位」ってのがあるだろ?。
生徒:「うん。ある。」
教師:これは位をもらえない人ということで、ここ以下が普通の人なんだよ。・・・・・じゃあこれだけわかればノートの次の問題は答えられるね?。
A貴族・豪族の生活を考えよう! 【1】最高の貴族の年収はいくら?。 【2】一番下の貴族の年収はいくら?。 【3】地方の豪族(下級役人の一番上)の年収はいくら? |
(各自ノートに答えを書く)
教師:では、いいかな?・・・・・・。では、最高の貴族の年収はいくら?。
生徒:「3億7455万円!!!!!」
生徒:「すげー!!!」
教師:えっつ、それだけ?。・・・・・もっとあるでしょ?。
生徒:「だって資料にそう書いてあるよ?。」
教師:そう。数字はね・・・・・・。でももっと隅々まで良く読んでご覧。
生徒:「わかった!!!」
教師:はい。□□くん。
生徒:「はい。資料の左のほうに、「貴族はこのほかに位によって水田があたえられ、また私有地ももっていた」とかいてあります。」
教師:そう。正解です。・・・・・・さっきの3億いくらってのは給料なんだね。これ以外に位にたいする水田があたえられそこから取れたお米を全て与え
られ、それ以外に私有地を持っていたからそこからの収入もあったわけだ。
生徒:「私有地って廃止されたんじゃあなかったの?。」
教師:貴族の特権として見とめられたんだね。位に対する水田も特権だけど・・・・・・。
生徒:「ずるいな!!」「で、どれくらいの田んぼをもらったの?。」
教師:そうだね。時代によって違うからね・・・・・。ちょっと後の資料だけど、資料集のp37を開けてご覧。そこの藤原氏の年収とあるね。約200年ほ
どあとの資料だけど。
生徒:「すげー収入!!!」
生徒:「4億5000万!!!」
生徒:「60町ってどのくらい?」
教師:1町が100m四方くらいだから、ちょうど西中の敷地ぐらい・・・・・。
生徒:「じゃあ西中の60倍?。」
生徒:「すげー!!!」
生徒:「藤原氏に対してっていう、29億1312万は何ですか?。」
教師:うん。たいへん力のあった藤原氏は一族の多くが三位以上の位をもらい、太政官を一人占めするくらいでね、例えば他の有力でない貴族が一
生かかってやっと五位になれるのに、藤原氏の氏の長の息子だと15歳になったとたんに五位がもらえるんだ。
生徒:「えっつ、15歳で!!」
教師:そう。15歳で。・・・・そしてその分の給料に五位の水田をもらうわけだよ。・・・・・こういう一族全体がもらった給料や位に対する水田の稲の合
計が29億1312万円ということなんだ。
生徒:「すごい!!!」
教師:そしてね、ある本によると、藤原氏全体がもらった位にたいする水田の面積が今の大阪府にあたるくらいになっていたとか・・・・・。
生徒:「えーっつ、めちゃめちゃすげー!!!」
生徒:「それに私有地が加わるわけでしょ?。」
教師:そう。・・・・・そしてその私有地には田んぼあり村あり川あり山あり・・・・海もある。
生徒:「じゃあ、なんでもとれるじゃあないか。」
教師:そういうこと。
生徒:「魚もとれるんだよね?。」
教師:そう。
生徒:「イノシシとか鹿とかもとれるよね?。」
教師:そう。毎日の食卓にのぼるわけだ。
生徒:どんな家に住んでいたの?。
教師:そうだね・・・・・・。藤原氏じゃあないけど、資料集のp29に戻して長屋王の邸宅復元模型というのを見てご覧。
生徒:「4町もあるの?。」
生徒:「西中の4倍!!!」
教師:そう。広い屋敷だね。・・・この人は天武天皇の孫で彼の奥さんも天皇の娘だ。だからかなり身分の高い貴族だ。
生徒:「でも上の表に、位は正二位と書いてあるから一番えらい貴族じゃあない。」
生徒:「あっつ、ほんとだ。」
生徒:「このたくさんの家全部が長屋王の家なの?。」
生徒:「家来が住んでいるんだろ!!」
教師:そう。家来とか召使いだね・・・・・。舎人所というのが護衛の家来のいるところ。家令所というのがこの家全体をしきっている家来のいるとこ
ろ・・・・。
生徒:「作業所もある。」
教師:そこは、いろいろなものを作る職人さんのいるところだね。
生徒:「あっつ、池もあるんじゃあない?。」
生徒:「どこどこ?。」
生徒:「下の方、木がはえてて山みたいなところの真中!」
生徒:「ほんとだ!!。池?。泳げるジャン。」
生徒:「プールみたい。」
教師:すごいね。
生徒:「じゃあ一番上の貴族のもっと上の天皇になるとどうなるの?。」
教師:どうなるんでしょうね?・・・・・・。最近の遺跡の発掘によると山や池があって、その池の真中には島もあり・・・・・・」
生徒:「ものすごいじゃん。」
教師:そうだね。・・・・・・・・で、さっきの問題に戻ろう・・・・・・・。2番。一番下の貴族の年収は?。
生徒:「従五位のところは今のお金になっていない。」
教師:その上の正五位と比べてみれば・・・・・?」
生徒:「2000万ぐらい!!!」「それに位の水田!!!」「あと私有地!!!」
教師:そうだね・・・・。この人が国司といって国々を治める役人なんだ。・・・・・・では役人の一番上の豪族の年収は?。
生徒:「704万円!!!」
生徒:「役人には位に対する水田はないの?。」
教師:うん。ないよ。
生徒:「なんだ!!」「でも今の普通の人の収入が480万だから、それよりいいじゃないか?。」
生徒:「昔の普通の人の収入はいくらなのかな?。」
教師:そうだね・・・・・。さっきのp37の平安時代の資料だと・・・・・・・10人家族で41から70万円と書いてある・・・・。
生徒:「少ねー!!!!」
教師:そう。すごい差だ・・・・・・。とすると「貴族や豪族が豪華な暮らしをできるわけ」がわかったね。
生徒:「収入が多いから!!!」
生徒:「特権があるから!!!!」
教師:そのとおりです・・・・・・。じゃあ最後の問題だ。前の時間にやったあの問い。「なぜいろいろ豪族たちの反対があっても最後は律令国家にまと
まったのか」を、今日学習したことをもとに考えてみよう。
(各自ノートに自分の考えを書く)
教師:では、発表してもらおう・・・・・。はい。□□くん。
生徒:「はい。私有地などの特権を認められて良い暮らしができるからです。」
生徒:「ほら!。だからわいろだっていったじゃあないか!!」(笑い)
教師:そうだね・・・・・他に・・・?。はい△△くん。
生徒:「それに大きな家に住んでたくさんの家来や召使いを使えるから。」
生徒:「それに大きなプールもある!!」「池だろ!!!」(笑い)
生徒:「まだあります。」
教師:はい、○○さん。
生徒:「はい。律令国家の時のほうが前より楽だからです」
教師:うん?。なぜかな?。
生徒:「大和国家の時は有力な豪族も王様で直接自分の土地を治めなければいけなかったけど、今度は自分より力のない豪族を役人にして国々や
郡を治めさせているから自分では何もしないのに給料や特権が入ってきて、ずっと楽だと思います。」
生徒:「なるほど!!!」「気がつかなかったよ!!!」
教師:そうですね。すごいところに気がついたね。・・・・・・・これで律令国家、天皇中心の国家にまとまったわけがわかったね。では、今日はこれでお
しまい。次回は普通の人の暮らしを見ていきたいと思います。