日本人はどこから来たの?A 海の大動脈


教師:では今日は、縄文人について学習してみよう。(縄文人の顔の絵をはる)ところで、みんなは縄文時代についてどのくらい知っているかな。縄文

   人って、どんな暮らしをしていたんでしょうか?。

生徒:「はい!。狩をして動物の肉を食べていました。」「漁もやっていたよ!」「漁ってなんだ?」「海や川で魚をとったりすることだよ」「あっつそうか」

教師:それだけかな。肉と魚だけじゃあ栄養が偏ってしまうよ。

生徒:「はい!。木の実や草などをとって食べていました」「ええーっつ、草や木の実なんか食べるの?。」

教師:今だって食べているじゃあないですか。

生徒:「あっつ、野菜?」

教師:そう。野菜。あれだって立派な草だよ。畑で育てたのと自然に生えてたのとの違いはあるけどね。それに今だっていろんな果物を食べるじゃあ

   ないか。

生徒:「りんご」「みかん」「なし!!」「栗!!!」「柿!!!!」

教師:そうだね。そういうこと。こういう自然のものをとってくることを何て言ったかな?。

生徒:「採集!!!」

教師:そうだね。採集だ。まあ,そう言う生活をしていたんだね。

生徒:「竪穴式住居に住んでいました」「1箇所に住まずに移動して暮らしていたって教科書に書いてあるよ!」「えっつ、どれどれ・・・・・」「ほんとだ!」

   「でもこないだやった大きな竪穴式住居なんかだと、移動していたとは思えないよ!」「あっつ、そうか。おかしいね。」

教師:そう。縄文時代にはまだまだたくさん謎があるんだね。何しろ文字で記録されていない。新しい遺跡が地下から掘り出されるとそこで発見があ

   り、謎がとけたりまた新しい謎が出来たりするんだ。そこで今日は縄文時代の謎の一つにみんなで挑戦してみよう(資料を配る)

北海道の洞爺湖畔にある貝塚遺跡から、貝製の腕輪をした人骨が見つかりました。

 その中に、「オオツタノハガイ」製の腕輪がありました。オオツタノハガイは、沖

縄や奄美諸島だけに取れる貝で、その貝を輪切りにして腕輪にしたものでした。

(伊達市有珠モシリ遺跡―縄文時代晩期)〔小学館刊「海を渡った縄文人」より〕

教師:その貝の腕輪の写真はそこにのってるね。大きな貝なんだけど、その貝を輪切りにして腕にはめられるようにするんだね。そしてこのオオツタ

   ノハガイという貝は北海道や本州ではとれなくて、沖縄か奄美諸島より南の海でとれるんだよ。

教師:では問題です。なぜ北海道から南の貝の腕輪がでるのだろう。自分の考えを書いてごらん。

生徒:「質問!。その地図に書いてある矢印は海流ってことだから、海の水が川みたいに流れているってことですよね。」

教師:はい。そうです。

生徒:「よし、わかった!!!」

(しばらく皆熱心に自分の意見をノートに書いている)

教師:書けたかな。じゃあ、班の座席に移動して、班で討論してみてください。

(班で討論。出てきた質問は、「貝っておよげたっけ」と「縄文時代に船はあったの」など)

教師:では各班の意見を発表してもらおう。最初にどの班からいこうか。(一斉にてがあがる)じゃあ、5班からいこう。

生徒:「はい。うちの班ではいくつか出てまとまりませんでした。貝が泳いでいったというのと(そんなのないよ!というあいのて)、貝の腕輪をした沖縄

    の人が海で死んで、死体が流されて北海道につき、北海道の人がかわいそうなのでちゃんと御墓をつくってあげたという意見です」

教師:なるほど。では他の班。じゃあ、2班お願いします。

生徒:「はい。なかなか意見がまとまらないんですけど、沖縄の人が近くの島の人と貝の腕輪を何かと交換し、その島の人がまたそばの島の人と交

    換しというようにして貝の腕輪が北海道まで伝わって行ったんだとおもいます。」

教師:あちこちで交換されながら腕輪が北海道まで伝わったというわけですね。じゃあ、次は・・・・3班お願いします。

生徒:「はい。南の島の王様と北海道の王様とが交流があって、南の島の王様が贈り物として腕輪をあげたという意見がありました。それから貝が

   流れて北海道まで流れ着いたと言う意見もあります。」

生徒:「縄文時代なんかに王様いたか?」「こないだやった大きな竪穴式住居があるじゃあないか」「でも王様の家と決まったわけじゃあない」「いいじ

   ゃあないか、そういうことで」

教師:いろいろ考えられるね。他の班は今までのと違う意見があるかな。・・・・・・はい、1班。

生徒:「はい。うちの班では、北海道の人が食べ物や道具を求めて沖縄まで旅をしてきて、そこでオオツタノカガイでできた腕輪を見つけてそれを買

   って持って帰ったという意見がありました。」

生徒:「縄文時代にお金なんかあったか?」「物物交換じゃあないの?」「石のお金かもよ」「でも早すぎるんじゃあないの?」

教師:貝のお金って可能性もあるね。それに縄文時代の遺跡から中国の金属でできたお金も出ているんだ。

生徒:「へーっつ、知らなかったな」「そんなに昔からお金ってあったんだ」

教師:そうかもしれないね。他にあるかな。・・・・・はい、6班。

生徒:「はい。6班では、面白い意見がありました。北海道では昔はオオツタノハガイがとれたんだけど、今ではとれなくなっていると言う意見です」

生徒:「えーっつ、そんなの。変だよ」「縄文時代は暖かかったというから、今とは気候が違うんだから、とれたんじゃあないの」「昔とれたんならたくさ

    んオオツタノハガイの化石とかが貝塚なんかからでてくるんじゃあないの」「先生どうなの?」

教師:残念ながらオオツタノハガイの化石は北海道からは出ていないんだ。

生徒:「ああ、残念!!」

生徒:「他にも意見があります。」

教師:はい、どうぞ。4班。

生徒:「うちの班では、貝が台風で飛ばされて北海道まで飛んでいったという意見と(みんな大爆笑!)、縄文時代のころは北海道と沖縄が一つの陸

   地だったので、沖縄の人が北海道まで歩いて行って腕輪を持って行ったという意見がありました」

生徒:「そんなのおかしいよ!」「だってナウマンゾウがいたころは日本は大陸と陸続きだったって教科書に書いてあるぞ!」「あっつ、ほんとだ!!」

   「何言ってんだ。それは3万年ぐらい前のことだろ」「だから縄文人はナウマンゾウを追っかけていたんだろ」「縄文時代は今から1万年ほど前か

   らって教科書に書いてあるぞ」「あっつ、ほんとだ!」「そうか、残念!!」「じゃあ、北海道は昔は沖縄の所にあったんだけど、大陸が動いてい

   まのところにいったから、南の海にしかすまないオオツタノハガイがいたんだよ」「それ、パンゲア大陸の話だろ」「そうだよ」「それは恐竜の時代

   よりもずっと前の話なんだから、人間なんかまだいないぜ!」「あっつ、そうか」

教師:いろいろ面白い意見がでたね。じゃあみんなの意見をもう一度じっくり考えてみよう(黒板のほうに注意を促す)

○板書事項

・貝が泳いでいった。
・貝の腕輪をした南の人の死体が北海道まで流れついた。
・近くの人同士が物物交換しているうちに沖縄の腕輪が北海道にまで伝えられた。
・南の島の王様が北海道の王様に贈り物として腕輪をあげた。
・北海道の人が沖縄まできて、そこで腕輪を買っていった。
・貝が台風で飛ばされた。
・昔は沖縄と北海道がつながっていたから。

教師:じゃあ、これを見て、この意見は違う。そんなことはありえないというのがあったら言ってください。

生徒:「貝が泳いでいった!」「貝が飛ばされた!!!」「昔は沖縄と北海道がつながっていた!!!」

教師:なるほど。これは消えるね。

生徒:「ほかにもあります。死体が流れついたってのはないと思います」

生徒:「なんでだよ。沖縄から北海道にむけて対馬海流っていう流れがあるんだから、流れ着いてもいいじゃあないか」「死体なんか、途中で沈むか

    サメにたべられちゃうんじゃあないの?」「あっつ、そうか」

教師:そうすると残るのは、3つだね。

生徒:「贈り物としてあげたとか南まで行って買ったとかいうのはないと思います」

教師:どうしてですか?。

生徒:「沖縄と北海道はずいぶん遠いじゃあないですか。縄文時代に御互い交流があったなんて信じられません」

生徒:「でも、縄文時代の人は中国や朝鮮のものさしを使っていた可能性があるというんだし、中国の王様に会いにいったという記録もあるんだか

    ら、沖縄と北海道が御互いに知っていてもおかしくないと思う。」

生徒:「でも縄文時代に船なんかあったの?」「中国まで行ったんだからあっただろ?」「漁をしていたんだからあるにきまってるじゃあないか」「先生

    ほんとのところはどうなんですか?」

教師:じゃあ、資料をだそう。資料集のp4をあけてごらん。

生徒:「あった、船だ!」「でも小さいよ」「こんなので海を渡れるかな?」「何人も乗れないよ」「ひっくり返るよ!」

教師:いや、ちょっと工夫すればなんとかなるんじゃあないの?。

生徒:「あっつ、わかった。この船を二つ並べて棒や板でつなげばいいんだ。」「どんなふうに?」

教師:こんな感じかな?。(黒板に絵を描いてやる)

生徒:「そうそう,そんな感じ」「でも信じられないなこんなので海を渡るなんて。それに漕ぐんじゃあ疲れちゃう」

教師:何か方法はないかな?。

生徒:「真中に柱を立てて帆を張ればいいんじゃあない?」「なるほど!!」「でも嵐にあったら沈むよ?」

教師:縄文人が海を渡ってと言う事が信じられない人もいるようだね。じゃあ、さっき配った資料の裏を見てご覧。

生徒:「えっつ、裏なんかあったんだ」

   <日本人はどこからきたの?>

資料A:南アメリカから見つかった「縄文土器」

@ 南アメリカのエクアドルに日本の縄文土器にそっくりの土器を出す遺跡があり  ます。太平洋岸にある「バルディビア」遺跡からは、およそ5000年ほど前の地層  から、大量の土器を伴った「都市遺跡」が発見されました。そこから発見される  土器は、形といい模様といい、この地域の前後する時代の土器とはまったく違  いました。

   調べてみるとこの土器は、日本の九州地方と神奈川県の三浦半島の縄文時代  なかごろの土器とかなり似たものでした。(1965年の発見)

A 南アメリカの中・北部の古代人のミイラの糞の化石にある寄生虫を調べたとこ  ろ、日本列島に多いものであることがわかりました。(1980年の発見)

B 日本列島の太平洋岸に住む人々に多い、HTLV・I型のウイルスが、南アメ  リカの北・中部にすむインディオにも多くいることがわかり、両者が、共通の  先祖をもつことがわかりました。(1994年の発見) 

             (明石書店刊「古代史の未来」より) 

教師:@の資料を読んでみよう。太平洋をはさんだ反対がわの南アメリカから日本の縄文土器そっくりの土器が見つかっているんだね。そこに写真

   が載っている。

(明石書店刊「古代史の未来」より)

生徒:「うわっつ、そっくり」「でもほんとに太平洋を渡れるの?」

教師:その資料の一番したの地図をみてごらん。これは実際に太平洋をヨットで渡って行った時の道筋なんだ。

太平洋横断航路(原書房刊「海の古代史―黒潮と魏志倭人伝の真実―」より)

生徒:「でもどうやって太平洋をわたるの?」

教師:(太平洋の海流の図を黒板に貼って)この図のように日本海流(黒潮)に乗ればそのまま北アメリカ大陸の近くまで行ってしまう。そこであとは

   北からの海流に乗って南下しても良いし、海岸伝いに行ってもよいわけですよ。

生徒:「どれくらいかかるの?。」

教師:半年ぐらいの航海だと言われています。太平洋をわたって北アメリカのサンフランシスコまでが3ヶ月ということは、ヨットによる航海で何回も確

   かめられていますから。

生徒:「でも食料はどうするの。」「魚を釣ればいいだろ?」「水は?」「海水を飲めばいいんだよ」

教師:海水はだめなんだよ。塩がたくさん含まれているんで、そんなのばかり飲んでいたんでは死んでしまう。

生徒:「じゃあ、むりじゃあないか。」「雨をためておけばいいんじゃあないの?」「そうか?」

教師:それに短い航海なら水を積んでいけばいいわけだし。

生徒:「長い航海じゃあだめなの?。」

教師:水は腐るからね。とくに暑いときには。それからAの資料とBの資料も読んでごらん。日本と南アメリカの人たちは共通の先祖を持っているん

   だね。糞の化石からでる寄生虫や血液中のウィルスが同じらしいから。

生徒:「ほんとだ」「そんなんでわかるんだ」

教師:こうやってみると、縄文人は船で太平洋を渡って南アメリカまで行っている可能性があるんだ。だとしたら、さっきの貝の腕輪の謎も解けてくる

   ね。

生徒:「北海道の人と沖縄の人とが行き来していた可能性があるということですね。」

教師:そう。そのとおりです。では最後にもう一つ資料を見せよう。(写真をテレビに写す)

生徒:「あっつ、縄文顔」

教師:そうです。これは縄文人と同じ顔をした人が現在世界のどこにいるかということ。最初の写真はインドネシア(太平洋の地図を指差す)、そして

   2番目がマレーシア、最後が南太平洋の島々だ。縄文人と似た顔の人は現在でも南の方のインドネシアやマレーシア、ここは東南アジアという

   地域ですが、そこに多いし、南太平洋の島々にも多いんだ。

教師:ここまで資料を見てくるとノートの最後の問いには答えられるね。問題です。縄文人はどこから来たのだろう。

(いっせいにノートに自分の考えを書いている)

教師:じゃあ、みんなの意見を聞こう。・・・・はい、○○さん。

生徒:「はい。私は縄文人は南の方の国から船でやってきたんだと思います。」

教師:なるほど。じゃあ○○さんと同じ意見の人!(大部分が手をあげる。でも何人か違うようだ)じゃあ違う人!・・・□□くん。

生徒:「僕は、北の方に住んでいた縄文人が気候が変わったので南の暖かい地方に船で移動したんだと思います。」

教師:ということは縄文人は昔から日本に住んでいたと?。

生徒:「そうとはいえないけど、日本も含めた北の方に住んでいたということも考えられます。今南に縄文人と似た顔が多いということは、南の人の一

   部がが北に移動し、それが縄文人になったとも考えられるし、逆に北にいた縄文人の一部が南の移動して広がったとも考えられます」

生徒:「へーっつ、すげー」

教師:そうだね。どちらも可能性はある。さあ、いよいよ謎は深まってきましたね。これは君たちが将来解いてください。では今日はこれでおしまい。

   次の時間は弥生人について学習します。

 


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