年貢さえすませば・・・・・・E 国土安全・万民快楽
教師:では今日は(フリップを貼りながら)、戦国時代の終わりに入ります。
生徒:「なんですか。それ。」「こくどあんぜん・ばんみんかいらく。」「何それ!」
教師:うん。これはね。こくどあんぜん・ばんみんげらく、と読むんだ。豊臣秀吉の言葉だよ。
生徒:「あの、全国を統一した人ですか?。」
教師:そうだよ。今日は、豊臣秀吉の全国統一ということがどういう意味を持っているかを考えてみよう。・・・まず秀吉の統一までの歩みを教科書で見てみよう。・・・教科書113ページの年表を見てご覧。
1560年 桶狭間の戦い 1562年 信長が家康とむすぶ 1567年 美濃を平定する 1571年 伊勢長島の一向一揆を討つ 比叡山の焼き討ちをする 1573年 足利義昭を追放する 浅井・朝倉氏をほろぼす 1575年 長篠の戦い 1580年 石山本願寺と和をむすぶ 1582年 本能寺の変(信長死す) 1583年 秀吉が柴田勝家を破る 1585年 長宗我部氏を討つ(四国平定) 1587年 島津氏を討つ(九州平定) 1590年 北条氏を破る(関東平定) 奥州も平定し全国を統一 |
教師:信長の全国統一のあゆみは、1560年の桶狭間の戦いで駿河、今の静岡県の大名今川義元を破ったところから始まる。そして徳川家康と結びつつ、美濃、今の岐阜県を平定すると、追放されていた幕府将軍の足利義昭を助けて都に上り、彼を将軍につけ、そのもとで信長が全国に命令するようになる。でもそれに正面から反抗する人々がいた。
生徒:「一向一揆だね。」「比叡山もだ。」
教師:そう。有力な寺院とそれに繋がる大名たち。浅井・朝倉などの近くの大名や、遠くの甲斐・山梨県の武田信玄とか、遠く中国地方の毛利元就などの大名が協力して信長の全国統一を邪魔しようとした。そしてその後ろには将軍足利義昭がいたんだよ。
生徒:「だから、将軍を追放したんだ。」
教師:そうだね。そして一向一揆や比叡山を破り、浅井・朝倉氏を滅ぼし、1575年の長篠の戦いで武田氏を打ち破り、1580年には、一向一揆の本山である石山本願寺とも仲直りをして、いよいよ中国地方の毛利氏を討って、全国を統一にかかったんだ。
生徒:「その時に殺されたんだ。信長は。おしいね。」
生徒:「誰が信長を殺したの?。」
生徒:「明智光秀だよ。」
生徒:「誰?。それ?。」
生徒:「信長の家来だよ。」
生徒:「なんで信長の家来がご主人を殺したの?。」
生徒:「・・・・・・・・?。」
教師:うん。それは、長い間謎とされてきた問題なんだ。信長の全国統一を助けていた明智光秀がなぜ信長を殺したかは。・・・ともかくここで押さえておきたいのは、信長はあと一息で全国を統一できるところまで来ていたんだよ。・・・そこで信長の死後、だれがあとを継ぐかで争いが起こり、その中で、豊臣秀吉が柴田勝家を破って、信長のあとを継ぐことになったんだ。・・・・そして彼が全国を統一したのは・・・・
生徒:「1590年!!!」
教師:そう。1590年だね。・・・・はい。◎◎さん。なんですか?。
生徒:「はい。秀吉は信長のあとをついでから、たった7年で全国を統一しています。信長は20年以上かかっているのに、なんで秀吉は早いのですか?。」
生徒:「そんなの簡単じゃん。」
教師:はい。■■くん。
生徒:「信長はほとんど全国を統一しかけていたんでしょ。だからもう残った敵は少なかった。すぐに統一できるわけだよ。」(なるほど!!)
教師:うん。うまいところに目をつけたね。・・・でもそれだけじゃないんだよ。・・・・ノートの最初の「秀吉の統一へのあゆみ」を見てご覧。
1582年 本能寺の変、信長死す 1585年 秀吉は【 】に従わない長宗我部氏を討つ(四国平定) 1587年 秀吉は【 】に従わない島津氏を討つ(九州平定) 秀吉は、奥羽・関東の大名に【 】を出す 秀吉は全国に人身売買禁止令を出す 1585年 秀吉は諸国の百姓に刀狩令を出す 1590年 秀吉は【 】に従わない北条氏を討ち、奥羽・関東を平定し、全国統一をなしとげる |
生徒:「何?。このかっこは?。」「なんか言葉を入れるの?。」
教師:そう。全てのかっこが同じ言葉が入るんだよ。・・・・・・・
生徒:「法律?。」「命令かな?。」「うん、命令だ!!」
教師:どんな命令かな?。
生徒:「・・・・・・・・・・・?。」
教師:はい。@@くん。
生徒:「はい。秀吉の家来になれっていう命令じゃないの。この命令に従わないから大名を討った。」
教師:うん。良いかもしれない。・・・他には?。
生徒:「難しいよ。なんかヒントをくれないかな?。」
教師:ヒントね。・・・・秀吉がやろうとしたことは、全国統一だよね。・・・全国統一ってことはどういうことかな?。
生徒:「う・・・・・・・・・?。」
生徒:「はい。わかりました!!」
教師:はい。□□さん。
生徒:「はい。全国統一ってことは戦争がなくなるってことだから、戦争をやめろっていう命令じゃないでしょうか。戦争をやめろっていう命令に従わないから、長宗我部さんなどの大名を討ったということ。」(なるほど!!)
教師:うん。うまい説明だね。正解です。戦争をやめろっていう命令。惣無事令っていいます(板書する)。
生徒:「何?。なんて読むの?。」
教師:「そうぶじれい」だよ。全てが無事になること。全国で戦争をやめろっていうこと。・・・じゃあその資料を配るね(資料I秀吉の政策を配布)
〔1〕 秀吉の島津氏あての手紙(惣無事令)(1585年) 九州の戦国大名同士の領土争いは、秀吉政権のもとで裁判をして解決する。だから今、争っているそれぞれの大名はおたがいに戦争をやめなさい。これは天皇の命令によるものである。この停戦令(戦争をやめろという命令)を拒否するものは成敗(兵を送り処罰)する。 〔2〕 秀吉の人身売買禁止令(1587年) 秀吉は「人身売買の禁止と、大唐・南蛮・高麗へ日本人を売ること」を禁止した。 〔3〕 秀吉の島津氏あての手紙(刀狩令)(1588年) 一、諸国百姓ら、刀・わきざし・弓・やり・鉄砲・その他の武具のたぐいを持つことをかたく禁止する。なぜかというと武器をもっていると、年貢を出ししぶり、一揆をくわだて、自然に領主に対して反抗する。そんなことになれば、田畑があれ、領主の収入がなくなるので、領地の武器をみんな取り上げなさい。 一、刀・わきざしはただ取り上げるのではなく、こんど大仏をつくる時、くぎやかすがいにするので、現在は言うにおよばず、来世までも、百姓はみな救われる 一、百姓は農具さへ持ち、いっしょうけんめいに耕作すれば、子々孫々まで長生きできる。百姓にあわれみをもってこのことをおしえさとせば、国土は安全で万民は快楽にくらせるだろう。昔の中国では、天下が統一された後、すべて武器を農具に変えたという。わが国ではためしたことがない。みなこのことを守り、百姓は農業に精を出すこと。 右のとおり、武器を必ず集めて、差し出すように |
教師:1番の資料が、惣無事令だ。戦争をやめなさいって書いてあるだろ。
生徒:「大名どうしの領土争いは秀吉が裁判して解決するんだ。」
生徒:「いいね!!」
生徒:「先生。質問!!」
教師:はい。なんですか。¥¥くん。
生徒:「はい。この資料には、この命令は天皇の命令によるものだって書いてありますが、どうして秀吉の命令ではなくて、天皇の命令なんですか?。天皇って何の力もないと思うのですが。」
教師:うん。良い質問だね。・・・これは一つは秀吉の身分によるんだよ。
生徒:「あっわかった。秀吉は百姓だから、大名たちがいうことを聞かないんだ。」
教師:うん。よく知っているね。秀吉は農民の出だと言われていて、これは有名な話だ。だから大名が馬鹿にする。・・・それともう一つ、天皇のことだけど、天皇って武力はないけど力はあるんだよ。
生徒:「何の力?。」
教師:権威っていうんだけど、すごく偉い人。普通の人ではおよびもつかないくらい偉い人って、とうじの人には思われていたんだね。そしてこの天皇だけが、日本の国を治める権利があると考えられ、だからこの人は全ての役人の職を与えることができた。・・・そしてね、例えば信長なんか、敵に囲まれて負けそうになると天皇に頼んで戦争を一時止めてもらって、それで自分の城に逃げ返って、態勢を立て直してからまた戦争するってことをやっていたんだよ。
生徒:「へえ!!。知らなかったな!!」
教師:だからこの秀吉の惣無事令に逆らうってことは、天皇の命令にさからうってこと。だから逆らった大名は少ないし、逆らった大名の家来がご主人の命令に従わずに秀吉の味方についてしまうから、戦争はわりと簡単に終わるんだ。こうやって彼は短い時間で全国を統一したんだよ。
生徒:「頭いいね!!」
教師:そして惣無事令を出すとともに、次の2番目の資料にあるような、「人身売買の禁止令」も出し、人を捕まえて奴隷にして売ることも禁止した。
生徒:「奴隷を捕まえるのが戦争の目的の一つだったから?。」
教師:そう。そのとおり。それに戦争を禁止し、奴隷を売買することを禁止してもらうと、喜ぶ人がいるね。
生徒:「農民!!」「百姓!!!」
教師:そのとおり。・・・・こういう命令を出しながら秀吉は全国を統一していったんだ。そして最後に、その途中で、資料の3にあるような、刀狩令という命令を全国の大名に出し、その領地の百姓たちの武具をすべて差し出すようにと命令したんだよ。・・・ちょっと誰か読んでくれるかい?。
・・・・はい。##さん。御願いします。
(資料の「刀狩令」を読む)
教師:意味はわかったかな?。
生徒:「国土安全・万民快楽って言葉は、この命令の中にあったんだね。」
教師:そうだね。百姓が武具を差し出して農業に専念すれば、国土安全・万民快楽な世の中になるっていうのが、この命令の目的だね。
じゃあ、問題だ。「百姓は刀狩令に従っただろうか?。従わなかっただろうか?。」自分の意見を書いてごらん。
(各自ノートに自分の意見を書く)
教師:だいたいできたようだね。では班で討論して、班の意見をまとめてください。
(各班で討論し、意見をまとめる)
教師:だいたいよさそうだから、みんなの意見を聞いてみよう。・・・・はい。6班御願いします。
生徒:「はい。うちの班では、百姓はこの命令に従ったということになりました。理由は、大名どうしの戦争がなくなって奴隷にされることもなくなれば、百姓が武器を持っている意味がなくなるからです。とっても良い世の中になったと喜んだと思います。」(賛成!!)
生徒:「今のに反対意見!!」
教師:はい。1班どうぞ。
生徒:「はい。良い世の中になったと考えるのは甘いと思います。そんなの信じられない。だからうちの班では、命令に従わないで、武器は渡さなかったということになりました。」
生徒:「今のに補足!!」
教師:はい。3班。お願いします。
生徒:「はい。うちの班の意見は従わないですが、従わないと秀吉や大名に責められたりしたら大変だから、従ったふりをして武器の一部を隠しておいたと思います。」
生徒:「はい。今の意見に質問!!」
教師:はい。$$くん。どうぞ。
生徒:「はい。なんで従わないんですか。戦争がなくなれば武器なんかいらないじゃない。」
生徒:「この命令にも書いてあるけど、大名は百姓から年貢を取るのが大事でしょ。百姓が武器を持っていたのは、戦争から身を守るだけではなくて、年貢をたくさん取られるのがいやで戦っていたのも理由だと思います。だから戦争がなくなったって、武器をもっていないと、もし大名がたくさん年貢を無理やり取ろうとしたときに、戦うことができないと思います。」
生徒:「はい。今のに補足があります。」
教師:はい。##さん。御願いします。
生徒:「はい。それに本当に戦争がなくなるかどうか、わかりません。秀吉に従わずに戦った大名もいたわけだし、大名って、もっとたくさんの領地が欲しいと思っているから、戦争したいと思うのです。だから力の強い秀吉が死んだりしたら、また戦争になると思います。信用できません。」(なるほど!!)
生徒:「でも、秀吉の戦争をやめろっていう命令に従わなかったら成敗すると書いてあるんだから、戦争はなくなると思う。それに天皇の命令だし。」
生徒:「でもそれは秀吉が強いからでしょ。秀吉に逆らえないから言うことを聞くんじゃないの。いつまでも平和が続くっていう保障はないと思います。」
生徒:「でもみんな戦争したいのかな?。いやだよおれは。」
生徒:「でも土地のない武士なんかは戦争をしたいと思うよ。金が入ってこないもの。土地がないと。」
生徒:「だけど百姓はいい迷惑だよ。戦争で田畑や町を荒らされて、奴隷にされて。」
生徒:「だから、戦争をやめさせるから、百姓も武器を出せっていうんでしょ!」
生徒:「でも信用できない!!!」
教師:うん。秀吉や大名を信用するかしないかが問題の中心みたいだね。
生徒:「はい。2班は意見があります!!」
教師:はい。2班の◎◎くん。御願いします。
生徒:「教科書をちょっと先を読んだのですが、戦争をやめろって言った秀吉が中国や朝鮮に戦争をしかけているし、また秀吉さんが死んだ後で、だれがあとを継ぐかということで関が原の戦いというのがありますから、秀吉や大名の言うことなんか信用しないほうが良いと思います。」
生徒:「ずるいよ。先を読むなんて!!。先のことなんかタイムマシンでもなければわかんないだろ!!」(爆笑!!)
教師:なるほど。結果からみると信用しないほうが良かったということか。・・・でも意味はわかったね。秀吉がつくろうとした世の中がどんな世の中なのかは。
生徒:「戦争のない世の中!!」「平和な世の中!!」
教師:そう。それが実現できたかどうかが問題だね。・・じゃあ、これは次の時間にまわすとして、今日のところは終わろう。ノートのまとめ問題は自分でやっておいてください。