<泣く子と地頭には勝てぬ>K まとめ
教師:では今日は、「泣く子と地頭には勝てぬ」の意味を考えていきたいと思います。最初に前の時間の復習をしておきましょう。
ノートの最初の承久の乱の結果をやってみてください。(各自問題に取り組む)
○復習:承久の乱の結果 幕府をたおそうとした【 @ 】に味方した【 A 】は少なく、戦いに敗れた上皇は島流しになり、 上皇に味方した【 B 】や【 A 】の領地は取り上げられ、東国の【 C 】が新たに地頭となった。 さらに、朝廷を監視するために【 D 】が設けられ、幕府の勢力は西国にも広まった。 |
教師:では、いいかな?。じゃあ答えあわせをしていこう。
@には何が入るかな?。
生徒:「上皇!!!」「後鳥羽上皇!!!」
教師:いいですね正解。・・・・ではAは何?。
生徒:「武士!!!!!」
教師:はい。正解。・・・・次は上皇に味方したBやAの領地は取り上げられたとありますが、このBって何だろう。
生徒:「貴族!!!!」
教師:貴族。正解です。・・・・そしてその領地には東国の誰が新たに地頭になったのかな?。
生徒:「御家人!!!!」
教師:そう。御家人です。・・・こうして幕府の勢力は西国にも広まったわけだが、この時、朝廷を監視するための役所が置かれたね?。
生徒:「六波羅探題!!!!」
教師:そう。正解です。・・・・こうやって承久の乱で上皇方に勝った幕府は今までの東国ばかりではなく、西国にも力を伸ばしたんだね。・・・そのころ
の様子を図にしてみました。(資料N承久の乱後の日本のしくみを配布する)
教師:西国も東国と同じように将軍の任命で守護・地頭が置かれ、村村から税を集めるようになったんだ。もっともこうして集められた税は朝廷に納
められる事は前と同じですが。・・・そしてその地頭は村村から兵糧米を集める事ができたので、天皇・貴族に入っていく税の額は減ったわけで
す。
生徒:「まだ天皇っていたの?。島流しになったんじゃあなかったっけ?。」
教師:うん。承久の乱の時の天皇は辞めさせられ、上皇3人は島流しになったので天皇をつぐ人がいなくなったんだ。そこで幕府は後鳥羽上皇の兄
弟で坊さんになっていた人を探し出し、坊さんを辞めさせて上皇とし、その息子を天皇にしたんだよ。
生徒:「天皇まで幕府がきめちゃったんだ。」
教師:そう。この事も朝廷よりも幕府が上に立ったことの現れだね。・・そして京都に六波羅探題が置かれて朝廷を監視した。・・・・ところで質問だけ
ど、朝廷の監視って何をしたかわかるかな?。
生徒:「・・・・・・・?。」「幕府を倒そうと考えていないか監視するのかな?。」
教師:そう。そういうことなんだよ。だから天皇・上皇といえども、毎日の行動や言った事やったことを幕府に監視されており、問題があれば辞めさせ
られてしまうわけだ。・・・これも朝廷よりも幕府のほうが上になったことの現れだね。
そこで問題です。このような状況の中で新たに西国の地頭・守護になった武士は、そこで何をしただろうか。
生徒:「えっつ、わかんないよ。そんなの。」「むずかしーい。」
教師:うん。・・・・・今まで武士って天皇や貴族のなんだっけ。
生徒:「家来!!!」
教師:そうだね。家来。だから主人のために領地から税をとって都まで運んだり、主人の命令で戦もした。そして税を少しでも軽くしてもらうために、主
人に多額の年貢を納めもした。・・・しかし承久の乱で天皇・貴族が戦いに負け、島流しになったり領地を取られたりした。主人たちのこのありさ
まを見た武士たちはどう思っただろうね。
生徒:「わかった!!!」「うん。あれしかないよ!!!」
(各自、自分の意見をノートに書く)
教師:いいかな?。・・・・じゃあ、班で討論してみよう。
(班ごとに討論)
教師:よさそうだね。では、発表してもらおう。・・・・・・・はい。1班。
生徒:「はい。天皇や貴族の領地からとった税の大部分を自分の物にして、天皇や貴族に税を少なくしか納めなかったと思います。」
教師:なるほど。税の大部分を横取りしたんですね。・・・・・他には。・・・はい、5班。
生徒:「はい。天皇や貴族にし返しをしたと思います。」
教師:具体的にはどんなことをしたんですか?。
生徒:「はい。天皇や貴族の領地を取り上げて自分の物にしてしまったと思います。」
教師:なるほど。領地を取り上げるね。・・・・・・・他には。・・・・・・・はい、4班。
生徒:「はい。兵糧米を決められた以上にとって、自分の物にしてしまったと思います。」
教師:なるほど。兵糧米を多く取るね。・・・・うん。他の班は?。
生徒:「6班は1班と同じ意見です。」「2班も同じです。」
生徒:「3班は4班と同じで兵糧米を多く取ったと思います。」
教師:なるほど。
生徒:「どれが正解ですか?。」
教師:うん。それはね。兵糧米を多く取ったり、集めた税の一部を自分の物にしたりしたんだ。
生徒:「領地を取ったりはしなかったんだ。」
教師:うん。この時はね。・・・・でもさ兵糧米を多く取ったり税の一部を取ったりされたら天皇や貴族は困るね。・・・・彼らはどうしたと思う?。
生徒:「地頭にやめるように命令した!!!」「地頭にやめてくれるようお願いした!!!」
教師:地頭が天皇・貴族の命令や御願いを聞くかな?。
生徒:「聞かない!!!」
教師:じゃあどうする。このままじゃ生活できなくなるよ。
生徒:「戦争して地頭をつぶす!」
生徒:「どうやって戦争するんだ。天皇・貴族は武力を持っていないんだぞ!」「あっつ、そうか。」
教師:そうだね。・・・・でもさ、この時代なら地頭たちに命令できる人がいるね。
生徒:「あっつ、将軍!!!」「幕府!!!!!」
教師:そう。将軍・幕府。・・・・天皇や貴族は幕府に地頭が税を多くとることをやめさせるようお願いしたんだ。
生徒:「幕府は御願いを聞くかな?。」
教師:聞くと思いますか?。
生徒:「聞かない!!!」
教師:なぜ?。
生徒:「幕府は地頭の味方だから!!!」「幕府は武士のためにあるから!!!」
教師:なるほど。・・・・でも残念ながらみんなの予想ははずれ。幕府は天皇・貴族の御願いを聞いたんだよ。
生徒:「えっーっつ。変なの。」
教師:うん。変だね。・・・でも幕府は禁止令を出したんだ。1232年に出された御成敗式目という法律には地頭や守護が決められた仕事以外のこと
をしてはならないという形で、彼らが定められた以上の税をとることを禁止したんだよ。
生徒:「なーんだ。つまんないの。」
教師:そうだね。・・・・でも、君たちが地頭だったら、この幕府の命令にたいしてどうしますか?。
生徒:「無視する!!!!」「しかたがないので従う!!!」「従ったふりして、陰でこっそり税を多くとる!!!」
教師:うん。地頭たちの多くは従わなかったようです。・・・・その証拠を見せようね。(資料O地頭の横暴を領主に訴える農民たちを配布)
<泣く子と地頭には勝てぬ>資料O 地頭の横暴を領主に訴える農民たち 紀伊の国(和歌山県)阿て河の荘では荘園領主と地頭との間に激しい領地争いが続き、その 中で地頭による違法な年貢の取立てにいかった百姓たちは、村民全員で村を捨てて逃げたり、 代表者4名が裁判に訴えたり地頭と戦った。しかし、1275年の二月に領主である東寺が地頭の 湯浅氏を荘園全体の管理者をやめさせるや、地頭は農民に対して激しく攻撃をはじめた。百姓 たちは、地頭の横暴を領主東寺にうったえた。 阿て河の荘上村の百姓がつつしんで申し上げます 二.年貢の絹ですが、地頭殿の手下に激しく責められてとられてしまいました。 三.年貢の綿ですが、地頭殿が20名もの手下でひどく責めるのでとられてしまいました。 四.年貢の材木ですが、地頭がたがなんだかんだと用をいいつけてくるので切り出すひまがあ りません。残った百姓が木を切りにいこうとすると、「逃げた百姓の畑に麦をまけ」と追 い戻し、これをことわると「おまえらの妻子をつかまえて、耳を切り鼻をそぎ髪を切って 尼にし、縄で縛って痛めつけるぞ」というので、年貢の材木を切り出せません。年貢の納 入はいよいよもって遅れます。 五.年貢をおさめようとして相談のため集まっていたところ、武装した地頭がたが百姓の首を 切ろうと襲いかかってきました。何とか逃げて命だけは助かりました。 六.地頭の手下たちは武装して村を襲い、村に何日も泊まっては毎日ご馳走を要求し、全部で 200人分もとられました。毎日その食事の給仕のため働くひまもありません。 十一、地頭の手下たち35人は村に居座りつづけ、一日に三度の食事を要求し、馬のえさまで要 求します。そのうえ私たちが食べる豆・あずき・あわ・ひえまでとりあげて馬に食べさせ てしまいます。 十二、また馬のえさの納入が遅いといって鎌・くわ・なべまでとられてしまいました。 このようなかずかずの非法なふるまいをされるので、百姓は村をすてて逃げ出さざるをえま せん。 建治元年(1275年)10月28日 |
生徒:「ひどいや!!」「やることがムチャクチャだ!!」
教師:うん。たまったもんじゃあないね。・・・この話しは1275年だから御成敗式目が出されてから40年もあとの話しだ。地頭は法律も無視して税をど
んどん自分のものにしていたんだね。
生徒:「天皇や貴族はどうしたの?。」
教師:どうしたと思う?。
生徒:「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
教師:そう。難しいかな。・・・じゃあ、ノートの最後のまとめの問題をやってごらん。
○まとめ 力を強めた御家人たちは、天皇・貴族の【 @ 】の【 A 】を横取りした。 天皇・貴族の求めに応じた【 B 】がこれを法律で禁止したが(=御成敗 式目)、地頭は従わず、たまりかねた天皇・貴族は【 @ 】を半分地頭に 与えるしかなかった。 |
教師:いいかな?。・・・・・じゃあいこう。@に入るのは?。
生徒:「領地!!!!」
教師:そう。領地。・・・じゃあAは?。
生徒:「税!!!」「年貢!!!!」
教師:そう。税や年貢。ではBは?。
生徒:「幕府!!!!」
生徒:「天皇・貴族は地頭に領地を半分与えたんですか?。」
教師:そうだよ。・・・・資料集の47ページをあけてごらん。
教師:これは1258年のことだけど、領地を二つに別けて、半分を「地頭分」とし、半分を「領家分」として、地頭・領主それぞれに分けたんだ。地図の
あちこちに赤い線を引いて、「地頭分」「領家分」と書いてあるだろ。
生徒:「あっつ、ほんとだ!!!」
生徒:「でも地頭はこれで満足したの?。」
教師:どう。満足したと思う?。
生徒:「しない!!!!!」
教師:じゃあ、どうする。
生徒:「残りの半分からも税をとる!!」「残りの半分も自分の物にする!!!」
教師:そう。そういうことなんだ。こうやって以後、天皇・貴族と地頭とが領地を巡って争い、だんだんと地頭が領地を分捕っていったんだよ。この争い
は約300年続くんだよ。
生徒:「どっちが勝ったの?。」
教師:地頭です。・・・・・・これで「泣く子と地頭には勝てぬ」の意味わかったでしょ。これで今日の授業を終わります。