「写楽」巨大壁画誕生
1.「大壁画」完成!
- 1994年10月22日(土)午後4時30分。縦6m横4mの「大壁画」が校舎正面に、屋上からつり下げられた。壁画の接合作業を始めてからす
-
- でに4時間たっていた。5階建の校舎の屋上から下げられた4本のロープを引っ張る教師8人。下で壁画を支える生徒約30人の呼吸もあって、
-
- 壁画はスルスルと壁面を昇っていった。
-
- 「ワーッ、できたぁー」思わず上がる歓声。さっそく壁画をバックに記念写真。その夜。子供からこの感激を聞いた一人の保護者が壁画を見にき
-
- て、すぐに新聞社に連絡。文化祭の翌日24日の新聞に「大壁画」の雄姿が掲載された。
-
- 2.「大壁画」完成まで
-
- @文化祭でなにをするか?ー今も心に残る”カンダム”−
-
- 6月すえの学年委員会で文化祭の学年参加の内容を考えたがなかなか良い案が決まらず、学年全員のアンケートを取ってみることとなった。
そして7月6日〜7日にアンケートを実施し、7月13日の学年委員会でアンケート結果に基づいて討論し、最終的には夏休みの校内リーダー研
修会の時の討論で決める事となった。
アンケート結果での2年生の提案は多岐にわたったが、「いらないもの、そのままではゴミになってしまうものを使って、何か大きなものをつ
くる」という点では共通していた。つまり昨年の文化祭の「緑と地球環境を守るカンダム」と同じ目的でやってみようということは、2年生全体の共
通の願いになっていた。
7月13日の学年委員会では「昨年のカンダムのように大きなビックリするものをつくろう」ということを決め、あとは夏休みのリーダー研修会の
ときに決定する事として、「どんな材料で」「何をつくるか」を宿題として散会した。
Aダンボールによる「巨大壁画」に決定!
- しかしリーダー研修会の議論はなかなかにつまらず、大変だった。昨年同様に空き缶でという意見や、ペットボトルという意見。そして捨てられ
-
- る紙を使ってという意見とダンボールという意見。内容も、大きな船を作ろうという意見や大きなお城やロケット、宇宙戦艦ヤマトが良いという意
-
- 見など。
いろいろ議論した結果、皆が参加できて、材料が集めやすく、みばが良くて、人を引きつけられるものということで、ダンボールを使った大きな
壁画をつくり、屋上からぶらさげることになった。カンダムを作るとき、全員が参加するにいたらず、途中で作業を邪魔する人も出たことや、空き
缶を集めるのが大変で、しかも集めたものがゴミと一緒で分別と洗浄が大変だったとの反省に基づいている。
そして絵はいろいろ論議したが見栄えがしていろんな年齢の人にもわかるものということで浮世絵に決定した。
しかし、絵を何にするかは決まらず、2学期になって体育祭が終わったところで、学年委員会にプラスして各クラスから1名以上の立候補によ
る「壁画製作実行委員会」をたちあげ、そこで細かいことを決めて動く事を決定した。
B壁画製作実行委員会の発足と討議
- 9月19日。 各クラス2名の学級委員に加え16名の立候補でもって、壁画製作実行委員会が発足した。そしてこの会議では「壁画の大きさと
-
- つくりかた」「ダンボールの集め方」の2つを決定した。
※壁画の作り方・展示のしかた 【a】ダンボールを集め、縦30cm横40cmの板200枚にする(予備20枚)
【b】穴を四隅に空け、はと目金具をつける。
【c】200枚を針金でつなげ、下絵を書き、指定の色を記入。
【d】絵を5等分して、各クラスで、一人最低一枚貼り絵をする。
【e】200枚をつなげ補修・強化し、屋上からぶらさげる。
|
※ダンボールの集め方 【a】自分たちであつめる。父母や他の学年を頼らない。
- 【b】自分の家から持って来たり、近所の店でもらってくる。
|
- ダンボールを自分たちで集めるという決定には、昨年は父母や先輩たちや先生たちの手で空き缶の大部分が集められたことへの反省がこ
-
- められているようだった。
9月22日の第2回壁画製作実行委員会では、各自の意見を事前に持ち寄って(資料1参照)、それに、基づいて「壁画の絵」と「展示構想」、
そして「実行委員会の係りと組織」について決定した。
(資料1)
第2回壁画製作実行委員会 議案付属資料
〔1〕壁画の絵 候補作品 a)東州斎 写楽 「大谷鬼次の奴江戸兵衛」
b)葛飾 北斎 「富嶽三十六景神奈川沖波裏」
〔2〕どのような展示をするか(実行委員の意見)
1)壁画の絵の説明(横山)
2)はり絵で一つ一つつくった事を示す(飯塚)
3)壁画を作るまでにかかった日の記録(清水)
4)壁画の作り方をまとめる(ミニ浮世絵をはり絵で)(中沢)
────────────────────────────────────
5)壁画を作った理由(清水・柳下)
6)今まで考えたことをまとめる(リサイクルを考えた・みんなでつくった)(飯塚)
7)ダンボールができるまで(山中・関口)
8)木・紙についての新聞を作る(山内)
────────────────────────────────────
9)いろいろな説明(軽部)
────────────────────────────────────
10)壁画を目立つようにする(柳下)
11)見る人が驚くもの・目立つもの(川上・原・藤堂・有野)
〔3〕どんな係を設けるか(実行委員の意見)
1)設計係(横山・関口)
──────────────────────────────
2)ダンボールを店からもらってくる係(山中)
──────────────────────────────
3)コンピューターで下絵の構成をする係(清水・飯塚)
4)下書きをする係(山中・関口・清水・飯塚・中沢)
──────────────────────────────
5)色を塗る係(山中・関口・清水・飯塚)
6)色紙をちぎる係(中沢)
──────────────────────────────
7)作る係(軽部)
8)穴をあける係(清水・飯塚)
9)ハトメをつける係(清水・飯塚)
10)針金をつける係(清水・飯塚・柳下)
──────────────────────────────
11)絵を修正する係(清水・飯塚・柳下)
──────────────────────────────
12)道具を用意する係(中沢)
|
そして9月26日の第3回壁画製作実行委員会では、ダンボールの集まり情況を点検し、不足分を集める方法を決め、係り分担と準備の日程
を決め、いよいよ壁画製作は実際に動き出した。(資料A参照)
(資料A)
壁画製作実行委員会報告(1) 1994.9.27 1.壁画の絵 【東洲斎写楽作 大谷鬼次の奴江戸兵衛】
2.ダンボールの集まった状況
現在:145枚 不足数:100枚
3.不足分を集める方法
@9月27日:コンビニエンスストアなどに係りが分担してあつめる。
A9月28日:近くの工場(父母の紹介)に係りが車でもらいにいく。
Bその他、多くのところから申し出があるので、必要以上に集めておく。
4.実行委員会の組織と分担
|
C巨大壁画完成までの歩み
- こうして10月はじめまでに必要な材料を集めた実行委員会は、各係りに分かれて作業を開始し、10月の中間テストとその後の合唱コンクー
-
- ルの練習の合間を縫って、合唱コンクール明けの学年全員での作業開始のために準備を進めた。そして文化祭当日の構想は次のように決
-
- まって行った。
○文化祭当日の展示の構想(10.13の実行委員会報告3より) @屋上プールのてすりからロープで壁画をつるす(2〜3階の窓・正門前)
A1階ピロティーまたは壁画の下にたて看板4枚をたて、ここに宣伝と展示の作品をはる。
Bその横でパンフレットを配布する。
|
各係りの作業内容と日程は以下のようになっていた。
実行委員会の各係りの仕事と今後の作業日程(実行委員会報告3より) ○下絵係
@下絵の製作・・・・・・・(1)下絵の細部修正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月12日完成
(2)下絵の色調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月12日完成
(3)完成した下絵の印刷(掲示用)・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(4)メッシュの入った下絵印刷(貼り絵用)・・・・・・・・・・・10月14日まで
(5)パンフレット用下絵の印刷(縮小モード)・・・・・・・・・10月14日まで
A下絵下書き・・・・・・・(1)絵全体の輪郭を書く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月12日完成
(2)絵の細かいところを書く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(3)マジックで線をなぞる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(4)ダンボール1枚1枚に色指定をする・・・・・・・・・・・・10月14日まで
Bカンダムイラスト製作・・・(1)写真をコンピュータに入力する・・・・・・・・・・・・・・・・・10月20日まで
(2)絵の細部修正・色調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月20日まで
(3)印刷(拡大モード・縮小モード)・・・・・・・・・・・・・・・・・10月20日まで
○設計係
@壁画基本設計・・・・・(1)必要なロープの長さ決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(2)ロープを止める位置の確認・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
A展示・・・・・・・・・・・・・(1)展示内容を決める・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(2)展示品をつくる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月17〜20日まで
○組立て係
@壁画の組立て・・・・・(1)下書きした壁画の分解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月15日
(2)壁画補強ダンボールを作る(総計64枚)・・・・・・・・10月17日〜20日まで
(3)完成した貼り絵をつなぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月21、22日
(4)壁画をつるす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月22日
A諸道具の製作・・・・・(1)壁画つり具の製作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月17日〜20日まで
(2)たて看板の製作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月17日〜20日まで
○宣伝係
@パンフの製作・・・・・・(1)資料集め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(2)原稿づくりとレイアウト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月21日まで
(3)印刷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月21日まで
A壁新聞の製作・・・・・(1)資料集め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月14日まで
(2)原稿づくりとレイアウト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月21日まで
○全員
@貼り絵の準備・・・・・・(1)色画用紙をちぎる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月15日
(2)生徒一人一人の担当部分を決定・・・・・・・・・・・・・・10月15日
(3)各クラスに道具を配布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10月15日
【ダンボール40枚、色画用紙、ノリ、原画2枚】
A貼り絵作業・・・・・・・・(1)各クラスに作業のやりかたを教える・・・・・・・・・・・・10月17日
(2)1枚1枚の仕上がりをチェックする・・・・・・・・・・・・・・10月17日〜21日
|
- 下絵の下書きも順調に14日には完成し、あとはいよいよ学年全員での貼り絵作業に入るまでになった。
-
★完成した下書き★
|
|
-
- そして合唱コンクールの終了後、ただちに貼り絵作業を開始し、なんとか文化祭にまにあって「巨大壁画」を完成させた。
(資料B作業日程)
|
全体の動き
|
壁画製作の流れ
|
下絵
|
設計
|
組立
|
宣伝
|
13(木) |
45分授業 |
|
○ |
○ |
× |
○ |
14(金) |
合唱リハーサル |
下書き完成 |
○ |
○ |
○ |
○ |
15(土) |
合唱コンクール |
第4回実行委員会(1:30〜3:00)貼り絵材料の配布など |
17(月) |
朝会 |
貼り絵開始 |
2:30〜3:10 |
○ |
○ |
○ |
○ |
18(火) |
|
8:30〜55 |
2:30〜3:10 |
○ |
○ |
○ |
○ |
19(水) |
|
8:30〜55 |
2:30〜3:10 |
○ |
○ |
○ |
○ |
20(木) |
文化祭係打ち合わせ |
8:30〜55 |
2:30〜3:10 |
○ |
○ |
○ |
○ |
21(金) |
|
8:30〜55 |
貼り絵合体 |
○ |
○ |
○ |
○ |
22(土) |
午後準備 |
貼り絵つるす・看板設置 |
○ |
○ |
○ |
○ |
- 3.今年の取り組みの特徴
-
- 今年も、昨年の「カンダム」の時と同様に、実行委員会で分担してつくった。
-
- a)設計係…5名。縦30cm横40cmのダンボールを200枚針金でつなげて、どのくらいの重さに耐えられるかの強度計算。実験をして調べた。
-
- b)下絵係…7名。浮世絵の写真版をもとに、コンピューターグラフィックスを使って、色や図柄を決め、200枚に分割して、ダンボールに下書き
- した。
-
- c)組立係…16名。ダンボールを切ったり穴をあけたり、そして200枚を針金でつなげた係。
-
- d)宣伝係…5名。紙のリサイクルの現状と意義を調べ、リーフレットをつくり、文化祭当日配付した。「壁画」をつくる目的を宣伝する係。
-
- 今年の「大壁画」と昨年の「カンダム」の一番の違いは、学年の生徒全員の力を、一人残らず結集したことである。200人の2年生が
-
- 各自縦30cm横40cmのダンボールに、色画用紙をちぎって貼り、「壁画」の部分をつくるようにした事だ〔「カンダム」の組立には全部の生徒が係
-
- われず、作品への愛着という点で、少し弱かったことへの反省〕。
-
- 朝と帰りの学級活動、週1時間の長学活。5日間をかけて、貼り絵をした。活動時間がくると、誰に指示されなくとも、生徒一人一人が動き、道
-
- 具をそろえて、黙々と貼り絵にとりくんだ。病気で休みがちの仲間の分や、他の仕事で忙しくて遅れがちの仲間の分を、休み時間や放課後に、か
-
- わりにつくってあげるという、思いやりも見られた。
- 文化祭当日、正門のところに集まって、「すごいものをつくったよな。来年はもっとすごいことやらなきゃかっこつかないな」と話す2年生の姿もみ
-
- られた。そして、文化祭の反省のアンケートに2年生の大部分は、最も印象に残った出し物として、自分たちの「写楽大壁画」をあげた。
-
- 4.来年の文化祭にむけて
-
- すでに「写楽大壁画」をつくりながら、生徒たちは来年の文化祭のことを考えはじめていた。2年間の経験をふまえ、その条件をも話しあってい
-
- た。出し物の条件とは、
-
- ○リサイクルをアピールできるものであること。
-
- ○「カンダム」や「大壁画」よりも大きなものであること。
-
- ○平面ではなく、立体的なものであること。
-
- 来年は、3年生。4月の修学旅行が終わったら、すぐに文化祭実行委員会を招集しようと考えている。最後に、生徒達の考えた案の中から面白
-
- いものをあげておこう。
-
- 〔来年の文化祭でつくるもの案〕
-
- ・ペットボトルをたくさんあつめて、「お城」みたいなものをつくる。
-
- ・いらない薄いビニールをつなげて、大きな熱気球を校庭にあげる。 など
(1994年の教研集会「カンダム誕生」レポートの「カンダムその後U」に加筆修正)