〔宮田雅之切り絵の世界〕95.3.21


 木版画の黒い線で画面を区切った世界に似ている。木版の場合、木を鋭利な彫刻刀で削った、切り口の鋭い線となるが、切り絵では紙を刀で切り取った、やはり鋭い線で、画面を切り取ることになる。両者は技法的にも似ており、絵に激しい強さを持たせる。

 宮田の絵は、切り絵を基本としながら、シルクスクリーンの技法や、ブラッシングなどによって、色に変化をつけている。しかし、基本的には、白と黒の世界。墨絵の世界にも近い。

 「切り絵」とは、中国の伝統技法であるそうな。だとすれば、墨絵にも似ているのは納得できる。物の形を単純化することによって絵にめりはりをつける。黒い線が事物を縁取りするために、めりはりのきいた陰影のくっきりとした絵ができるわけである。この技法は、日本的な画材だけでなく、もっと広く使えるようだ。キリスト・天使・ピエロ…。こういった画材の作品も、画面がきりりとひきしまって、とても良い。

 考えてみれば、画面を黒い太い線で区切る技法は、日本の浮世絵版画のもの。そしてそれは、墨絵の影響下でできたもの。その技法の影響を受けて、黒い太い線で事物の輪郭を囲った力強い絵で、ヨーロッパの画壇を席巻したのが、1930年代の表現主義、特にドイツのブリュケ派であった。事物を象徴的に表すには、とても良い方法なのかもしれない。ただし、宮田の作品は、あまりにも装飾的すぎて、作品に精神的深みがないのは残念である。


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