〔印象派の華〕95.3.12
フランス印象派の画家たちの中の3人の女流画家たち。その代表的な作品を一堂に集めてみたという面白い企画。
1)ベルト・モリゾ
3人の中ではもっとも印象派的な画家。人物画を中心としており、光の戯れを見事に描いている。
印象に残った作品を二つ。
「裁縫の練習」─窓辺で少女が母親(?)に裁縫を習っている。窓からあたる強い光のハイライトの印象が強調されている。
「梨」─パステル画。川と舟と教会をバックにして、1本の梨の木が描かれている。青を主体にした美しい風景画である。
この人の作品の特徴は、淡い色彩と明るい色調、そしてぼかされた事物の輪郭。印象派の特徴そのものである。1892年以後、色調が暗くなる。夫の死と関係があるのかもしれない。
2)エヴァ・ゴンザレス
風景画と静物画が多い。印象に残った絵を一つ。
「コップにさしたバラ」─白バラの白い花の輪郭。黒ではなく、ピンクと様々な色をまぜて、光の妙を見事に写しとっている。
3)メアリー・カサット
3人の中では、最もアカデミックな画法の画家である。印象に残った絵を一つ。
「孫たちに本を読んでやるカサット夫人」─淡い美しい色彩。窓から差し込んで来る光が人の表情をくっきりと浮かびあがらせている。とても優しい情景。
3人とも自分の子供や家族を描いた作品が多いのは何故か。「女性らしい視点」と解説はいうが、はたしてそうなのだろうか。母であり、妻であり、主婦であることが最上とする当時の支配的な傾向の中にあって、女性が画家として生きるのは、やはり大変であったのであろう。時間の大半を家庭内で過ごさねばならなかった3人。その結果、必然的に画材は身近なものにならざるをえなかったのではなかろうか。3人の女流画家の主たる画材に、この時代のいまだ保守的な風潮との闘いの影を感じるしだいである。