〔中国の陶磁展〕  94.11.23


 東京国立博物館の特別展示。八千年の中国の陶磁器の歴史を、新しい技術と作風の創造の源泉期とその展開期の二つに分け、その変遷を名品の展示によってあとづけようとした意欲的な展示である。印象に残ったものをいくつかあげる。

1)龍山文化の黒陶

はじめて現物を見た。黒光りする光沢の美しさ。そして極めて薄い器の壁。紀元前のものとも思われぬ、素晴 らしい作品である。

2)三国〜南北朝期

 この時期に初めて青磁が 発明されたという。「青」磁といっても、 青ではなく、薄い緑がかったものでしかな いが、それまでの表面に絵つけしただけの 陶器にはない美しさがある。

3)北魏〜隋の時期の作陶

 この時期の作品は とても生き生きとしたものが多い。特に素晴らしいのが動物をかたどったもの。北魏 の孝文帝(471〜499)の中国化政策によって 生まれたもので、南北朝期の伝統と、北方 騎馬民族の文化とが融合したものか。この 時期に急激な技術革新が行われ、三彩の技 術が生まれたという。

4)晩唐〜五代・宋の時期

 この時期は流通が 発展し、大量生産がなされた時期である。 そして五代期には、白磁が発明された。と いっても白ではなく、灰色がかったもので はあるが。宋のころはこれがもっと改良され、真っ白な白磁の壷などが生産され、青磁の色も青く(正確にはマリンブルー)美しい。

5)元の時期

 この頃には「青花」という、西アジア伝来のコバルト顔料による絵付けで つくられた磁器が盛んに造られた。ヨーロッパの王侯貴族がこぞって購入したものという。しかし、文様が派手で毒々しい。器としての美しさは、以前の宋の磁器の単色のものの方が美しいのではないか。

6)明の時期

 これはもう堕落以外の何ものでもない。赤絵という美しい赤い色を主体とした華やかな絵つけが流行していたが、その文様は元の時代よりもより装飾的・類型的なものとなり、粗悪な大量生産品となっている。

7)清の時期

 この時期の陶磁器はとても美しい。宋─元─明とつづく時代の技術革新をベースにして、その作陶文化が花開いたという感じである。文様が写実的であり、とても美しい。雍正年間(1723 〜38) の頃の作品が素晴らしい。中国のルネサンス期とでも名付けたらよいだろうか。


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