〔よみがえる中国戦国時代の美と音〕   1992.4.24


 紀元前5世紀の、中国の小国「曽」の王である「乙」の墓から見つかった、大量の青銅器と楽器の展示。

 青銅器は、その模様の複雑さと、その作りの精巧さ、そして、その器の大きさに圧倒された。器そのものは、長い年月の間に、その本来の色を失い、緑青で全面を覆われている。そのため、器の本来持っていた華やかな色彩は、再現されていない。ただ、その細工の精巧さに圧倒されるのみ。

 しかもその紋様は、蛇や魚や野獣をもとにした、怪物のものが圧倒的に多い。そして、酒や食べ物を入れていたその器の大きさといったら。人が何人も入れるものすらある。王というものの、権力の大きさに、ただあきれるばかりであった。

 今回の展示で、素晴らしかったのは、65個の鐘をセットした編鐘を中心とした、中国古代楽器の演奏である。5オクターブの音域を持つ編鐘を中心に、石を32個組み合わせた編磬が高音部を受け持ち、それに琴と笛が加わる。

 編鐘の音はとても澄んでおり、キラキラと輝く夜空の星のような音であった。しかも二人の演奏者が、同じメロディーを異なった音域の鐘で、同時に演奏すると、二つの鐘の音が溶け合って、なんともいえない美しい音色となる。この音を背景に、琴や笛の物悲しい音が加わる。

 演奏されている音楽は、中国のかなり昔のものであるのだが、鐘の音を中心としたその演奏は、極めて現代的であった。近年の、打楽器を中心とした即興演奏の数々。それと、同質の音楽が、2000年以上前にあったとは。演奏時間は、15分間であったが、音楽に引き込まれ、ほんの2〜3分しかたっていないような気がした。


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