〔梶田半古の世界展〕1994.11.6

 明治から大正時代の日本画の世界で大きな足跡を残したが、若くして世をさり、その作品が散逸して埋もれてしまったという梶田半古のはじめての本格的な回顧展。
 
 画風は、伝統的な日本画の範疇に入ると思う。
 
 題材の多くは歴史的説話からとられている。
 
 そして淡彩で墨絵のような趣を持ち、江戸期の文人画のような感じの絵である。
 
 これはと目についたのは、子犬を描いた作品ふたつ。
 特に「犬と遊ぶ」は犬や子供たちの表情がとても生き生きと描かれ、描き方こそ伝統的な日本画ではあり、筆の運びや題材の取り方、そして表現の方法は、西洋の絵の影響が見られる。
 
 展示されていた作品のうち、軸装されたものは伝統的な画題が多く、上記の犬のようなモダンな作品は、新聞や雑誌の挿絵の方に多く見られた。
 
 考えてみれば、新聞や雑誌に小説が連載される事自体が新しいものであり、西洋風のものである。その小説の中には翻訳ものもあり、西洋の文物や人を描くことも多い。このような新たな活動の場に積極的に入っていった所に、この画家の新鮮さがあり、この分野の作品にのみ、新しい日本画の風が生まれていたのかもしれない。
 
 そしてそうだからこそ、この画家の作品は作品として評価されず、後世にもあまり残らなかったのではないだろうか。挿絵の作品はとても写実的であり、生き生きとしている。

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