〔光の花─アール・ヌーヴォー〕1994.10.30

 自由ヶ丘にある、アール・ヌーヴォーのガラス作品を集めた美術館。その美術運動の中心的な存在であったエミール・ガレ(1846〜1924)の作品を中心に展示してある。
 
 壷や花瓶、ランプシェードが主だが、文様のモチーフはいわゆる「花・蝶・風・月」。日本の陶磁器をおもわせる程に日本的な作品ばかりである。
 
 特に、ガレの作品がそうである。
 乳白色のガラスに単色に近い淡い色彩で、花や昆虫をあしらう。蜻蛉・蝶、花では水仙など。文様としてとりあげたものの多くは日本のものである。他の作家達の作品も多かれ少なかれ、日本的雰囲気を漂わせている。19世紀末から20世紀初のヨーロッパ人は、この日本的な文様に大いに新鮮な驚きを感じたのであろうか。
 
 ということは、花や蝶などをまるで紙に書いた絵画でもあるかのように陶器やガラス器に写すという技法は、それまでのヨーロッパにはなかったということであろう。そしてそれは、資本主義の爛熟期にあたって、それへの反発として生まれた、自然への回帰という、19世紀末のヨーロッパ人の間に流行した風潮とも一致する美的感覚ではなかったろうか。
 
 アール・ヌーヴォーと呼ばれた美術運動があったということは知っていたが、それがこれ程までに日本的な美的感覚の影響を受けていたとは知らなかった。NHKの「趣味の工芸─ガラス」の番組を見ていて興味をもち、この美術館に始めて足を運んだわけだが、ガラス工芸の素晴らしさを再確認すると共に、アール・ヌーヴォーと呼ばれた美術運動について、もっと詳しく知りたくなったしだいである。

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