〔黄金の都シカン発掘展〕1994.10.25

 南米インカの黄金製品の大部分が、インカ以前の文明のものではないかとの仮説に基づいて、ペルーの砂漠に眠るピラミッド群の発掘が行われている。そしてその一角から、「王」とも呼べる人の墓が見つかった。この墓の副装品を中心とした展示である。
 
 金製品を見る限り、かなり高度な技術をもった文明である。
 
 解説によると様々な純度の金合金がつくられ、用途や階級によってちがった純度の金を使用しているとのこと。また墓の被葬者に付けられていた仮面は、この地域の文明にとって「神」とあがめられていたものをかたどり、この人物が「神」の化身としてあったことを示しているという。
 
 さらにこの被葬者がさかさまに埋葬されていたことは、この文明において天と地を治める2種の支配者がいるという思想をあらわすものであり、この墓は「地」の支配者だから頭を地にむけているのではないか。従って、ピラミッドの反対側か中央に、「天」を治める者の墓があるという仮説があり、興味深かった。
 
 しかし、展示を見ていて、いくつか疑問がある。
 
 その一つは、「王」の装飾品をつけた人形の衣装である。
 一見して変である。なぜならば、「王」が身に付けていた装飾品は目映いばかりの黄金製品であり、かなり複雑な意匠にデザインされたものばかりなのに、衣服のほうは、目の荒い麻で織られた、粗末なものであるから。そばによって解説を読むと、これは現在のペルーのインディオの織る衣服であって、シカン帝国時代のものではないとのこと。
 多くの壁画が発見されており、その神の像あたりを参考にして、染色された織物をつくれなかったのかと思う。
 
 もうひとつ疑問なのは会場の問題。
 国立科学博物館の片隅を使用しており、会場は狭く入り組んでおり、大変に見にくい。これほどの大発見を知らせるのに、このように小規模でみすぼらしい会場なのはなぜであろうか。

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