〔斉藤 清 展〕 1994.8.21
作者の斉藤清氏は、現代版画界の第一人者だという。1907年福島県生まれ。
最近の故郷会津を描いた風景画とは違って、初期から中期にかけての作品が、特に素晴らしい。大胆な構図と色彩。題材がまた、おもしろい。花や鳥や動物。これらがまるで人間でもあるかのように、滑稽な姿をして描かれている。
構図が素晴らしい。大胆に対象の形を変形し、そうすることで絵に生命や躍動感を与えている。色彩も原色を使い、強烈な印象を与える絵である。
ビデオでの紹介の中に、1930年代の自画像があった。
色使いが大胆で、形はおおいに変形されており、当時はやったフォービズム的傾向の作品である。図録の解説を見ると、1940年代の初めに、雑誌で見た、ゴーギャンなどの絵に感銘を受けたとある。こうして見ると斉藤氏の版画は、20世紀初頭の抽象絵画の影響を色濃く持っているといえよう。
最近では若い頃のようなおもしろい絵は少なくなっているが、それでも、大胆な構図と抽象化の傾向は、その中でも生かされているようである。
会津の冬シリーズは、雪によって事物の細かい部分が捨象された上に、さらに画家によって変形され強調されている。しかも色彩は白と黒を基調とし、その諧調による変化のみである。
一見すると墨絵的ではあるが、抽象絵画の系譜は、ここにも流れているようである。
それにしても人間はなぜ、年をとると、故郷にこだわるのであろうか。斉藤氏の作品も故郷会津と日本的風景が中心となり、そのほかでは、仏像などが目立ってきている。
面白い傾向である。