〔シャガール展〕 1994.4.24
初期から晩年にいたる時期の油絵やリトグラフなど、78点からなる展覧会。「シャガールの宇宙を体験しよう」というのが、サブタイトルになってい た。
中心になる作品は、1957〜60年にかけてつくられた版画作品、「ダフニスとクロエ」の42枚のリトグラフである。
物語の進行に伴って、その場面場面を描いた作品である。しかし、色がとても美しい。線も色調も軟らかく、とても幻想的な雰囲気の作品である。一点一点をじっくりと見て、それぞれの場面が、どのようなものであり、そこに登場してくる人物が、どのような感情を抱いている場面であるかを考えながら絵を見た。そこで興味深いことにきがついた。
それは、シャガールの絵は、色の違いによって、場面の雰囲気というか、登場人物の心の動きを描いているのではないかという事である。
はっきりとそれが分かる色が3つある。
緑は、最も落ち着いた心の爽やかな場面で多く使われている。
青色は静寂と死をあつかった場面に多用されている。
赤い色は、戦いの色であり、人々の心が興奮の坩堝となっている場面で使われているように思えるのである。
42枚の版画をじっくりと眺めていると、登場人物の心の動きが伝わってくるかのようである。喜びあり、苦しみあり、悲しみあり、そして、満ち足りた穏やかな時もあり。絵に登場する人物も場面も幻想的ではあるが、なぜか、とても実在のものであるかのようにリアルなのである。なぜか・・・・と考えているうちに浮かんだのが、色の違いで、人の心の内を描いているのではないかという考えであった。そのつもりで、何度も42枚の版画を見直してみると、納得いった次第である。
シャガールの絵は、とても深い味わいのあるものだ。