〔玉堂美術館〕 1994.3.20


 日本画の巨匠。川合玉堂の作品を納めた美術館。当日は初期の、絵を学び始めた頃の作品が多く展示されていた。

 14才の頃の、小鳥を描いた作品。

 細部まで丁寧に描かれてあるだけでなく、まるで生きているかのような存在感がある。特に、小鳥を正面から捉えた絵がおもしろい。この人の小鳥の絵は、すでに14才にして、目が生きているのである。

 玉堂は最初、京都の円山派の画家に師事したという。このことを解説で読んで、なるほどとうなずけた。円山派は、中国南宋の絵画の影響を受けた一派で、事物を写実的にありのままに描こうとする一派である。江戸時代末期の有名な浮世絵師、葛飾北斎も、この円山派に学んだことは知られている。

 美術館のテレビで、玉堂がスケッチをしている場面を見た。筆を使って、墨でスケッチしていくのだが、その筆のタッチの自由自在なこと。線の太さや勢いを自在に変化させ、一見すると手荒に描いているように見えて、細かいところまでもスケッチしてしまう腕の見事さ。風景であろうと、動物や植物であろうと、その筆の運びはかわらない。かなり正確なデッサン力があり、そしてその描いた線に、生命があるかのようである。

 さらにすごいのは、色のつけかた。スケッチであるので淡彩で描くわけだが、その色をつくるのが早いこと。そして微妙な色の違いを描きわけてしまう。

 いくつか展示してあった風景のスケッチをみた時、フランスのコローやイギリスのターナーを連想させるものがある。自然の美しさを、光の微妙な変化とともにとらえる絵。この人に、日本画の絵具ではなく、ターナーが使った水彩絵具や、現代の水彩鉛筆を持たせたら、どんなにいきいきとした絵を描いたことだろうか。これは、一緒に絵を見た村上さんとの共通した感想である。


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