〔第45回三軌展〕 1993.4.4
西高津中学校に写真を撮りにかよっていた写真家、静氏の作品が入選したとのことで頂いた招待券。はじめて三軌展というものを見た。この会がどのようなものかは知らないが、なかなか面白いものであった。
絵画の部門に出品された作品に共通しているのは、「テーマが暗い」ということ。人間世界や人の作った物の崩壊・破滅、滅びの予感に満ちた作品がとても多いのだ。
滅びつつある物その物をあつかった作品や、おどろおどろしい幻想の世界を描いた作品。そして過去への記憶、古き良き時代への回想といった作品が並んでいる。
先行き不透明な現代。時代を領導してきた様々な理想が、音をたてて崩壊していった現代。現代の絵画は、このような不安に満ちた時代の空気そのものを反映していると見て良いだろう。
この不安をストレートに反映したのが、以上のような作品とすれば、その同じ気分を、人間的なものからの逃避として表現したのが、「自然への無条件の賛美」という傾向の作品である。そして同様な傾向のものとして、「子供」を描いた作品もあるだろう。
テーマとしては、一見、明るいものである「子供」と「自然」。この両者の背後にも、現実への諦めと不安が漂っていると思う。
写真部門と彫刻部門にも、同じような傾向が見えるが、入賞した静氏の作品にも、同様な傾向が見られる。
静氏の作品は、荒れぎみの曇り空のもとの荒れた海を背景に、前景に枯れた草。その空間に、宙を浮遊する「石」。不動のものとしての「石」が宙を浮遊する写真で、「確固としたものが何もない不安」を現しているのであろうか。
それにしても、面白い展覧会であった。