〔ピカソ陶芸展〕1992.7.31
ピカソの陶芸作品は、生涯に約3300点あまり。今回の展示では、その内の70点。箱根彫刻の森美術館が所蔵する作品で構成されている。一番数の多いのが、大きな絵皿である。かなり大胆なタッチで描かれた、人物の顔。もう一つ多いのが、スペインに特有の闘牛の場面を描いたもの。
特に面白かったのは、闘牛の場面を描いたもの。
どこが面白いかというと、絵皿に、絵の骨格になる部分を、最初から盛り上げて焼いておく。その上に、黒一色で、大胆に、闘牛の場面が描かれていく。絵であるのだが、絵の骨格の部分が立体になっていて、このことによって、絵が絵でなくなっている。そして、骨格があるので、筆で描かれた部分には、筆の早い動きによって、事物の動きが表現されている。
絵でありながら絵ではなく、レリーフでありながらレリーフではないという面白い効果がある。しかも単彩で描かれているので、墨絵を見ているような感じすらするのである。
もう一つ興味をひかれたのは、花瓶。
「女」と題された花瓶。形は、女性の体のようなふくよかな曲線をもった花瓶に、丸い把手のようなものが、その前についている。女性が体の前で、そっと手を組んで、立っているような感じがするのである。
ひじょうに単純化された形ではあるが、題につけられたイメージが、見事に表現されている作品であった。
作品の数は少なかったが、なかなか面白い企画であった。