〔浮世絵名品500選〕 1991.10.26
神奈川県立博物館の所蔵する浮世絵を中心に、その中から選び抜かれた500枚の絵。その後半の作品展250点である。
肉筆画を含む初期の単色画から、しだいに錦絵とよばれるようになった多色版画に発展していくさまがわかるように、浮世絵が展示されていた。
気がついたことの中で、一番印象的だったのは、葛飾北斎や安藤広重のあの有名な作品は、初期の浮世絵の伝統の流れにあると同時に、洋画の影響をかなり受けているということであった。特に遠近法の導入は、その絵に目で見たままの世界を導入していた。そしてもう一方で見逃せないのが、中国の絵の影響である。宋から明にかけての、精密に対象を実写するという画風。この影響も顕著である。しかし、このことは、何も北斎や広重に限られたことではなく、彼等の同時代人や彼等の師達にも言えることである。北斎や広重に特徴的なのは、浮世絵の伝統と先人たちの絵画の革新を踏まえたうえで、彼等独特の技法というか作風を産み出していることである。写実的に対象を描写するだけでなく、その形や色を極端にデフォルメ(変形)することによって、対象に対する画家の思いや考え方をより明確に打ち出していることである。
このあたりが、ヨーロッパの後期印象派や表現主義に影響を与えた所なのかと納得した次第であった。